始まりの日、舞い散るは?②

「はぁ…朝から何だか疲れたよ」

「わしが癒してやるのじゃ!」

「ありがとう、コン」


制服に着替えた俺とコンは、今日も今日とて先に出たウカミから20分ほど間を空けて家を出た。


隣を歩くコンからぽふっともふもふの尻尾が押し当てられ、少し重かった心身に元気が戻っていく。


凄く幸せ!なんだけど……疲れることになったのは、コンの誘惑に耐えるためでもある。


流石に言わないけれどね?


何せ嬉し恥ずかしだったので、恨み節どころかありがとうございます!と何方かと言えば嬉しい悲鳴というやつだから。


「一緒のクラスだと良いね」

「うむ、全くじゃ。離れるなんて考えられぬし…それに」

「うん。それに」

「「ウカミが一緒にするだ(じゃ)ろうし」」


声を揃えてコンと呟くと、笑いが込み上げてきてどちらからともなく笑い出す。


すっかり春の陽気に包まれた馴染み深い通学路。けれど、コンと出会ってからは退屈だと思ったことはない。


偶にウカミも一緒に登校できた日は、尚のこと賑やかさを増して楽しいものだ。


勿論。こうして二人きりの登校というのも、良いものだけれど。


「未子さんや明とは、一緒になりたいな」

「そうじゃな…特に明の奴は一人別のクラスじゃったからの、折角なれば仲の良いお主らと一緒が良かろうて」


明だけ隣のクラスだったので、3年生では同じクラスになれたらきっと楽しさも去年より倍になるよね!


腕を組んでこくこくと頷いていたコンだけど、ふと違和感に気付いたらしく片眉を吊り上げながら此方を見上げ訊ねた。


「のう、紳人。誰か忘れておらぬか?」

「ん?あぁ、勿論トコノメやラスマも一緒になるわけだから、賑やかで良いよね!」

「いやそうではなくてな…田村は一緒じゃなくて良いのかのぅ」

「彼奴だけ別クラスだったら万々歳だよ」

「お主ら本当に友達じゃよな!?」

「大丈夫だよコン、バッチリ友達さ!」


明日には敵になってるかもしれないけど。


今日の友は明日の敵っていうし、何だったらその日の内にあんなに一緒だったのにと嘆かなければいけない。


そんな俺と悟は…固い絆で結ばれた友達以外の何者でも無いだろう!


「……夕暮れはもう、違う色になっていそうなくらいの立派な絆じゃ」


やれやれとコンが肩を竦めながら尻尾をフリフリと揺らした。どうやら、しっかりと俺と奴の間柄を分かってくれたみたい。


「まぁいずれにせよ、何かしらの変化はあるじゃろ。どんな変化であろうと、楽しもうではないか♪」

「コン…あぁ、そうだね!」


いよいよ俺とコンも3年生。考えなきゃいけないことも、沢山あるはず。


でも、ウカミも一緒に三人で考えればどんなことが起きても大丈夫!


父さんや母さんだって支えてくれているんだ、未来への不安なんて無い。


もし生まれても…きっと皆が、力になってくれる。


逆に俺からも、コンたち神様も未子さんたち人間も隔てなく力になってあげたいと思う。


さぁ…今日は何が起こるかな!?


ダダダダダ。


「「ん?」」

「紳兄さん、コンちゃん!」

「ひとっ走り付き合えよぉ!?」


突然ドボォ!とお腹に誰かが飛び込んできた。


体をくの字に曲げ衝撃に震えながら、俺はその人物の名前を辛くも呼ぶことに成功する。


「や、やぁ真奈ちゃん。今日から同じ学校だね」

「はいっ!よろしくお願いします!」

「朝から元気じゃのう」


そんな真奈ちゃんに、コンも微苦笑を隠せないようだった。

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