二人から、鳴り響く③
「素直すぎる俺って…」
「平たく言えば、我慢しなくなった弟くんですね」
自分の尻尾をもふもふする小さな俺の頭を撫でながら、ウカミは頷く。
確かにその様子からは俺の遠慮や恥じらいなど微塵も感じられない。
「つまり…紳人!妾の尻尾も好きなだけもふもふして良いぞ!」
「本当!?わぁいアマ様〜!」
「くぉぉ!これ、これじゃあ〜!」
花の蜜に誘われる蝶のように、今度はアマ様の尻尾にむぎゅっと飛びつく。
「むむぅ〜!釈然としないのじゃが…」
「まぁまぁ…コンにとっての俺は此処に居るんだし」
この小さな俺ももう一人の俺、偽物ではない。ちょっと素直が過ぎるけれど子供だから仕方ないのかな?
「とりあえず、アマ様にはそっちの俺を預けますね。そろそろ寝る時間ですし」
「ありがとうなのじゃ!今夜だけでなく、ずっと良いよな!?」
「え、えぇ…俺は構わないんですが」
ムギュッと抱きしめられて幸せそうな小さい俺。
何だかむず痒いなと思いながら、チラリと隣のコンを見ればぷくっと頰を膨らませていた。
「わしが許さぬ!今夜だけの特別じゃ!」
「何をぅ!良いではないか、コンにはその紳人があるのじゃから!」
「そもそもまだ勝手に紳人を増やしたことも許してはおらんのじゃ!」
可愛らしい取っ組み合いから、またしてももふもふ尻尾相撲を始めてしまうコンとアマ様。
「……」
「ん?どうした、若き日の私よ」
「何か行ける気がする!?じゃなくて、これって僕たちを取り合っているんだよね」
「多分、そうだね」
アマ様たちを遠目で見守っていると、隣にウカミと幼い俺が寄ってきた。
何か言いたそうな顔をしているのが気になったので声を掛けると、微苦笑しながらこう返してくる。
「でも以前、僕のために争うのはやめてぇ!って言ったらお仕置きされたからさ」
「あぁ……」
あの時はコンとウカミに取り合いされて、和ませようとしてそう叫んだら
「あの時の弟くん、面白かったですね♪」
「やられた本人に同意を求められても複雑だよ?」
尻尾をウキウキ顔で揺らし頰に手を当てるウカミに微苦笑を溢すと、腕を組んで小さい俺もうんうんと頷く。
「ぬやややっ!」
「くぬぬぬっ!」
一歩、いや一本も譲らないコンとウカミの尻尾相撲。眺めている分には可愛らしい限りなんだけど…やっぱり
「弟くん。私と一緒のお布団で寝ましょうか」
「うん、良いよ!」
「「こらぁウカミ!」」
「漁夫の利ってやつです〜♪」
こうして小さい俺は、ウカミに抱きかかえられながら寝室へ運ばれていく。
「何を、なさっているんです?」
「あっ」
いつの間にか寝室の布団の準備をしていたらしいコトさんがいて、俺と小さい俺はコンたちの眠る部屋ではなくその隣の部屋で眠ることになった。
「何だか」
「不思議だけれど」
「「まぁ、いっか」」
寸分違わぬ動きでぽふっと布団に横になり、其々眠りに落ちていくのだった……。
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