二人から、鳴り響く②

「のう、紳人」

「「はいなんでしょう?」」

「……背が大きい方の紳人よ」

「「俺(僕)のことだね」」

「お主は無理があるじゃろ!?」

「ちぇ〜」


面妖なとばかりに唸るコンの質問に、俺ももう一人の俺も答える。


二つ目の問い掛けに揃って頷くけれど、子どもサイズの俺に目を丸くするもう一人の…長いから幼い俺と呼ぼう。


その幼い俺は不服そうに唇を尖らせ、素直に引き下がった。


「今のお主は何とも無いんじゃな?」

「うん。分かれる瞬間は若干気持ち悪かったけれど、今は何とも」


自分の体をキョロキョロと見回してみても異変はなく、自覚する異常も特に感じられない。


これは…どういうことなんだろう?


「アマ様〜?」

「な、何じゃウカミよ」

「何をなさったのか…聞かせていただきたいんですけれど♪」


ウカミが暗黒微笑でゆらゆらとアマ様に近付く。


若干背後が揺らめくほどの感情が見える気がする…あぁほら、アマ様だけじゃなくて幼い俺まで怯えちゃってる。


「その、じゃな?紳人本人が妾を撫でてくれぬなら。もう一人紳人を増やして、其奴に撫でて貰えば良いな〜と…思ったのじゃが」

「丸っきり同じじゃなくて、こんな形になっちゃったと」

「そういうことじゃな⭐︎」


アマ様は、俺が言葉を引き継ぐとてへぺろ⭐︎と戯けた。


その様子には流石の俺たちも思わず苦笑いが溢れる。困惑する幼い俺を宥めながら、さてどうしたものかと考えていると。


「何…してるんですか?アマ様?」

「あっコト、良いところにガガガっ!?」


片付けを終えたらしいコトさんが鬼の形相でアマ様の後ろに現れる。


そのまま、顔を綻ばせて振り返ったそのこめかみをぐりぐり〜!、思い切り両手で刺激し始めた。


「「あのお仕置きって本当にするんだ…」」


ポツリと漏らした言葉が揃い、思わず幼い俺と向き合った。


「そういえば気になっていたんだけど…お前、いや君は何処まで記憶があるの?」

「えっと。多分、一緒だよ。僕も気持ち悪くなったところまでは覚えてるんだ」

「なるほど!じゃあ一人称と背丈以外は同じか…てことはぁ!?」


話しているうちに何だか面白くなってきて、スッと背筋を伸ばすと幼い俺も目を輝かせてピンと背筋を正す。


こんな特殊な状況…やるしかないよね!


「ダブル!」

「マイティ!」

「「クリティカル⚪︎トライクゥ!」」

「そんなものは絶版にした方が身のためじゃぞ…?」


意気揚々と拳を突き上げる俺たち。正真正銘、目の前の彼は俺だ…!


コンに半ば呆れるように笑われるけれど、この際仕方ない。


「……」

「む?ウカミ、どうしたのじゃ。考え込むように静かになって」


アマ様はコトさんからお叱りを受けており、俺は幼い俺とやいのやいのはしゃいでいる。


少しずつ混沌を極め始める状況の中でコンはウカミの様子が気になったらしい、その顔を覗き込みながら訊ねた。


「もしかしたら…違いが分かったかもしれません」

「本当か!」

「恐らく。ねぇ、小さい弟くん」

「ん?どうしたのウカミ」

「私の尻尾、もふもふして良いですよ♪」

「わぁいやったぁ!」

「「何ぃ!?」」


ウカミがそっと前に出した尻尾に、無邪気に飛びついた幼い俺。


一切の逡巡を見せることなく飛びつくものだから、俺もコンも驚きを禁じ得ない。


そんなバカな!?もう少し迷おうよ俺!


「紳人お主!」

「違う違う!俺が意図的にもふるのはコンだけだよ!」

「やっぱりです!」

「「え?」」


涙目で俺の首に尻尾を巻き付けるコンに必死に訴えかける中で嬉々とするウカミに、俺もコンも異口同音に反応した。


「この小さな弟くんは…素直過ぎるんです!」

「な、何じゃってぇ!?」


コンが大きく驚いて耳も尻尾もまっすぐ立てる中。


幼い俺は、至福の顔でウカミの尻尾を堪能するのだった。


……う、羨ましくなんてないもん!

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