試練の時、信念の鬨⑥
「紳人がどんなやつか気になったってのもあるが、1番は少しでも神に相応しい奴になれるよう鍛えるつもりだったんだよ」
俺とコンが風呂から戻り、晩御飯を食べ終えた後のスサノオは俺に試練を課した理由を告げた。
「お前が一緒に居るオレたちは人から見ればこんなにも出鱈目で理不尽な一面もあるんだってな」
「なればそうじゃと初めから…」
「言っちゃあ理不尽じゃねぇだろ?」
肩を落として呟くアマ様に、逆に肩を竦めて不敵に笑うスサノオ。
彼の言うことはストンと俺の腑に落ちた。
恨み辛みは全く無い。スサノオの意図は理解できたし、俺もコンも無事なのだから。
「それじゃあ、コンやウカミとこれまで通り暮らしても良いんですね?」
「ハハッ!そりゃあ勿論、あの時と同じで娘が決めたことなら尊重してやらなきゃな。泣かせるようなことがあれば承知しないが」
「実は最近弟くんが冷たくて…」
「あ"?」
「洒落にならないから止めてくれませんかね!?」
スッとスサノオの顔から表情が消える。
そのあまりの恐ろしさに大慌てでウカミに訴えると、ウカミはぺろりと舌を出して茶化しスサノオは腕を組んでガッハッハと高らかに笑った。
本当に仲の良い親子である。
神の気まぐれ…いや悪戯かな?それに振り回されるのも悪く無いけれど、やはり心臓に悪い…。
「次無断で紳人に試練を課すようであれば…わしが本気で『黄泉』送りにしてやるのじゃ」
「お、おう。もうしねぇ、しねぇからそんな顔するなよ…」
あのスサノオが身じろぎするほどの剣幕でコンが睨む。
ブンブンと首を縦に振られるのを見て、漸く落ち着き俺の隣で座り直した。
「紳人くん。ちょっと気になったことがあるんですけど、聞いてもいいでしょうか?」
「俺に答えられることなら大丈夫ですよ、コトさん」
暫く皆で雑談していたけれど。不意にコトさんが机越しに俺と目を合わせ、こんなことを聞いてきた。
「紳人くんは学校を卒業したら何かやりたいこととかあるのでしょうか」
「ほぅ!妾も聞きたいのう」
「オレも聞かせてくれ」
「そんな大袈裟なものじゃないよ?」
それでも、やっぱり気になるらしく皆何処か目を輝かせながら俺の言葉を待つ。
不意にコンと目が合った。金色の瞳は優しく細められ、温かく見守ってくれている。
次にウカミを見る。いつもと変わらぬ微笑みを浮かべながらも揶揄うのではなく、それはまるで背中を押してくれるみたいで。
コホンと一つ咳払いを挟んで俺は語った。
卒業したら、色んな神様に会ってみたいこと。
もし寂しいなら話し相手になり、何か困っているなら手助けしたい。
そうやって沢山の縁を繋いでみたい…と。
あと、プリンの神様にもいつか会いたいとも。
「ほ〜、良いじゃねぇか!お前さんなら本当に出来そうだしな」
「妾たちも何かと忙しいからのう…それに、人間じゃから話せることもあるじゃろうて」
「応援してますよ、紳人さん。聞いて良かったです♪」
スサノオ、アマ様、コトさんの
ホッと胸を撫で下ろし、いざとなれば助けてくれそうだ…とコンやウカミと笑い合ったのも束の間。
「ところで紳人。妾、人間の神使が欲しいと思っておったのじゃが…助けてくれぬか?」
「オレも欲しいなぁ」
「私も欲しいです!」
「え〜っとぉ?」
「却下じゃ!」「却下です!」
前途多難?な未来に俺は微苦笑を禁じ得ないのだった。
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