日の下で、荒ぶる風③
「おぉ、スサノオではないか!元気そうじゃのう」
「おう!アマ姉も楽しそうだな!」
コンとアマ様は同時に前のめりに倒れたので相撲は引き分けとなる。
間もなくしてスサノオに気付けばガバッと起き上がり、そのまま此方へと駆け寄ってきた。
その顔は朗らかで彼に対する苦手意識などは微塵も感じさせない。
「いつぶりじゃろうな〜」
「あんま覚えてねぇが…まぁそんなことよりだ。顔出しついでにウカミの奴とも話してぇんだが…今何処に?」
「ウカミか。それならばほれ、ウカミ〜?」
「は〜い♪お父様、お久しぶりですっ」
「……お父様ァ!?」
スサノオの姿を見ると柔和な笑顔を見せるウカミに、思わず目を見開いて驚愕してしまう。
「おぉ、此処に来てたんだな!お勤めも頑張っているようで、関心関心」
「勿論です。アマ様の補佐として神々を纏める役目も、お姉ちゃんとしても頑張っていますから!」
「……お姉ちゃん?オレたちはあれ以来子を成しては」
ウカミの不意な発言に、キョトンとするスサノオ。こんな顔もするんだな…。
「いえ、お父様。そうではなく…私は今、其処に居る」
微笑みを湛えたまま我が姉ことウカミは俺の方を向き。
「弟くん…神守紳人の姉として、居候させてもらっているんです♪」
「---何じゃあそりゃぁぁぁぁ!!??」
目が合ってフッと目を細める愛娘に、ゴウッ!!と突風を巻き起こしながらスサノオの絶叫が天岩戸中に響き渡るのだった。
〜〜〜〜〜
「紳人ォ!」
「はい!?」
ビリビリと腹の底まで響くような声で名を呼ばれガシッとその大きな手に肩を掴まれる。
「お前さん…お前さんよぉ…!」
グググと両肩を掴む手に力が入り、頭を下げて言うものだから表情が伺えずに怖くて仕方がない。
いや。もし怒らせてしまっていた場合スサノオの圧に耐えられたとはとても思えないので、寧ろ見えていないだけマシなのかも。
その場にいる全員が固唾を呑んで見守る中、やがて顔を上げたスサノオは。
「ありがとうなぁ!!」
「……はぇ?」
思い切り笑顔で号泣していた。予想だにしないことに、ポカンと頭が真っ白になる。
「昔から出来た娘でよぉ…神様としては申し分なかったんだが、人ともあまり関わろうとしなかった。オレはぁ嬉しい!ありがとう!」
「えっと…あの、俺はただの人間でウカミを姉にするって自分で言うのも何だけど不遜な行為では…?」
「細けぇこたぁ良いんだよ!今後とも仲良くしてやってくれ!何ならオレをお義父さんって呼んでも良いぞ!?」
「お義父さん落ち着いてください!」
「おいアマ姉オレ人間にお義父さんって言われたぞ!随分と久しぶりだぁ!!」
「羨ましいぞスサノオ!紳人、妾はお義母さんと呼んで欲しいんじゃが!?」
やいのやいのと俺を取り囲むアマ様とスサノオの姉弟に、俺は微苦笑を溢すほかない。
一見強面に見えるスサノオも、気さくな神様なのだ。
そしてアマ様も最高神ではあるけれど相変わらず親しみやすくて。
「……やれやれじゃな」
クスッと微笑むコンと目が合うと幸せを噛み締めながら、さりげなくお義母様呼びは辞退させていただいた。
「なぁんでじゃあ!!」
その反応が面白いから、とは絶対に言えないよね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます