瞳輝き、尻尾ゆらめき④
「ふむふむ…ちょっぴり早いけど、この時期はたけのことかごぼうが旬なのか。これは今夜は煮物だね!」
「甘めの味付けで頼むのじゃ!」
「私もそれが好きですっ」
「勿論ですとも」
ふとテレビを見ていると今が旬の野菜コーナーが始まった。
その中にたけのことごぼうがあり、これはと今夜の晩御飯のメニューを決める。
だけど我が家にそれらは無い。
近くのスーパーに買いに行こう。以前買い物した時にプリンの材料は買い足してあるので、今回は野菜を買うだけだ。
「ちょっと野菜買ってくる。何か欲しいものとかあるかい?」
って聞いてみたけれど、きっと口を揃えてプリンって言うんだろうな…。
そう想像してクスッと笑みが溢れてしまう。
しかしそんな俺の思いとは裏腹に、コンとウカミは目をパチクリとさせ顔を見合わせたではないか。
「……どうかした?」
結局、逆に俺が不思議に思って聞き返すことになる。
「紳人、わしらも行こう」
「はい。荷物持ちしますよ」
「近場だし軽いものだから大丈夫、女の子に荷物持ちはさせられないしね」
「寂しいのじゃぁ!」
「紳人〜!」
「わ、分かった!皆で行こう、ね!?」
「「わぁ〜い♪」」
わざわざ歩かせることもないと一度は提案を断るも
……そんなにお買い物したかったなんて。全然気付かなかった、俺もまだまだだね。
今後はもっとコンたちの気持ちを汲み取れるように頑張ろう。命、燃やすぜ!
ムンっと今一度決意を固め、軽く身支度を整えると神守家総出でお野菜を買いに玄関を開け放った。
やっぱり、仰々しすぎない?
〜〜〜〜〜
「お〜綺麗な空だね。今の時間帯はマジックアワーなのかも」
「景色が最も美しく見える時間帯じゃな」
「黄昏の魔法とも呼んだりしますね〜」
夕焼け空がオレンジ、金、紺と色を変え太陽の光もないこの時間帯をそう呼ぶらしい。
そんな不思議な空を皆で眺めながらスーパーまでの道のりをのんびりと歩く。
厳密には、俺は空を彼女たちは沈んでいった夕日の方角を見ていた。
「う〜ん?」
それも些か何かを待ち構えるような雰囲気で。
その証拠に、コンもウカミも耳をピンとさせ集中している。
何か変なものでも見えるのかな…と小首を傾げていると。
「…やはりか」
「お仕事、終わったのでしょうか?」
程なくしてコンはしたり顔になりウカミは微苦笑を浮かべてみせた。
「あの、それって…」
『……ォォ…』
「ん?」
何かが聞こえた気がして、両手で耳を澄ましてみる。
『…紳人ォォ〜!!』
「この声は。あ、あ〜…なるほど通りで」
「気付いたようじゃの」
「そういうことです」
何故コンとウカミがただのお買い物にああも付き添いたがったのか。
それを理解すると、気持ちが通じ合った感覚に二神と微笑みを交わす。
「……こらぁ紳人!妾の声を無視しおったな!?おのれ、罰当たりなやつじゃ!」
「アマ様、それほどでもないけれど…お久しぶりです」
キラリと何かが瞬いたかと思えば瞬きする間に目の前にアマ様が舞い降りた。
因みに、若干涙目である。
コンとウカミが俺に付いてきてくれた理由。それは…。
「向こうで説教してくれる!コンもウカミも一緒に来るのじゃ!」
「了解じゃよ」
「承知しました♪」
俺を一人にしてたら、問答無用で拉致られていたからだ!
人も歩けば神様に会う…これは諺に出来そう。
神様たちに囲まれながら、そんなことを考えるのだった。
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