瞳輝き、尻尾ゆらめき②
「あいたた…彼岸花見えたよ」
「すまぬ紳人、つい…」
「気にしないでコン。嫉妬させちゃった俺の方こそごめんね?」
「人が良すぎなのじゃ!しかし、だからこそ愛しておる」
ヨミとハイタッチしそうな勢いで気絶すること数分。
まだ鈍く痛む気がする頭を摩りながら頭を起こすと、コンが眉尻を下げて俺を膝枕してくれていた。
しかし本当にコンが謝ることはない。
原因はウカミの揶揄いが半分、後は思わずドキドキしてしまった俺が半分なのだから。
「てやっ」
「おっと?」
コンの膝から起き上がってソファに背を預けると、今度は彼女が俺の膝の上に向かい合って座り込む。
そのまま抱き締めてくるものだから体温がひしひしと伝わり心地良い。
「ふふ…本当に熱々ですね」
眩しいものを見るように目を細めるウカミ、口元にそっと手を当て微笑む姿は気品に溢れていて綺麗だ。
「ウカミはあまり焚き付けちゃ駄目だよ?」
「はぁい、気を付けます♪」
「全く…」
ウカミが可愛らしくてチロリと舌を見せるので、それ以上は何も言わずに許してしまう。
「紳人、あの」
「ん?あっ」
名前を呼ばれ一度瞬きしてから気が付く。
俺は無意識に、ウカミの頭を撫でてしまっていた。
撫でられ慣れていないのかその表情は珍しく恥じらいの色を浮かべている。
「ごめん、無意識で!」
「あ…」
「……ほほ〜?」
慌てて手を離そうとすれば、パシッと両手で俺の手を包んだ。
咄嗟のことだったらしくウカミ自身も目を丸くして驚いている。
それを見逃すコンではない。目敏く見つけると、ニヤリと口角を釣り上げ悪戯っっ子のような笑みを浮かべた。
「紳人、わしが許す!もっと撫でるが良い!」
「え?良いの?」
「待ってください、これはっ」
「では止めて良いかの?」
さわさわと撫でる手に対してウカミは顔を赤くするけれど。
コンが意地悪な質問をすれば、そっと手を膝に下ろしながらもポツリと呟きを溢した。
「……もう少しだけ、お願いします」
「うむうむ。素直なのは良いことじゃ♪」
俺を脇腹から手を回して抱き締めながらブンブンと尾を揺らすコン。
どうやら、普段揶揄われている自分がウカミを揶揄っているのが楽しいみたい。
「はぅぅ!これは恥ずかしいですよぉ…」
「嫌かい?」
「嫌じゃないから困るんです〜!」
……うん。これは楽しい、コンが悦に入るのも分かるな。
(紳人、紳人。わしらがあのウカミを手玉に取っておるのじゃ!)
(偶には俺たちが揶揄っても罰は当たらないよね!)
目線を合わせ心の中で会話しながら微笑み合う。
最早、ニヒルな笑みと言っても良いくらいだけど。
「次は絶対!私が揶揄うんですからね〜!?」
小さくブンブンと両手を振りながらも耳を伏せて撫で受けるウカミに、俺とコンはあははと声を上げて笑うのだった。
「今ウカミの胸を見たのぉ?」
「き、気のせいです……ア"ッ"」
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