第50話

瞳輝き、尻尾ゆらめき①

「紳人〜」

「なぁに〜?」


ソファに座ってのんびりとテレビを眺める、そんな穏やかな時間。


その最中、紳人の膝の上に座るコンが彼の胸板にぽふっと後頭部を押し当て名前を呼びました。


ゆったりとした呼び方を真似るように優しく返す紳人。


優しい微笑みを浮かべる様が、どれだけコンのことを大切に思っているのかがひしひしと伝わります。


「ふふっ。呼んでみただけじゃ♪」

「……可愛いなぁ、もう」


へにゃりとはにかむコンも愛おしそうに彼女の頭を撫でる紳人も、私からしたらどちらも可愛くて仕方ないですね!


おっと、尻尾が勝手に揺らめいてしまいました…今はお二人が楽しんでいる最中。


私の尻尾を視界に入れちゃったら、もふもふ好きの彼はどうしても目で追ってしまうでしょう。


そうすると、コンは鬼の形相になりもふもふ絞めの刑を執行しちゃいますから。


揶揄うのはもう少し甘いひとときを堪能してもらってからにしましょう。


「紳人、わしの尻尾…モフるか?」

「良いの?是非させて欲しいな」

「勿論じゃ!お主が望むなら幾らでも」


自分の膝の上に丸めていた尻尾を戻し、フリフリと目の前で猫じゃらしのように揺らせば、紳人は猫まっしぐらとばかりに抱きつきました。


数回すりすりと頬擦りしてその感触を堪能すると、彼はポソリと幸せそうに呟きます。


「あったかぁい…もふもふだぁ…」

「弟くん、完全にトリップしてますね」

「うむ。喜んでもらえるのは嬉しいが、これはちと心配になるのじゃ」


恍惚とした表情で惚ける紳人に、私もコンも微苦笑で見つめ合いました。


呆れてはいません。私たちもプリンを食べると、ほっぺたが蕩けてしまいそうになりますし。


……それに。多分此処までもふもふの虜になってしまったのは、コンによる『神隔世』で尻尾漬けによるところも大きいでしょうね。


元々好きではあったものに、拍車をかけてしまった気がします。


とはいえ、面白いので敢えて何も言いません。


コンも自分のしっぽに喜んでもらえて凄く嬉しそうですから、それで良いのです♪


「それに……本当、良い匂いだよ」

「むふふ〜そうじゃろぉ?お主に堪能してもらえるよう、常に拘っておるのじゃ!」

「愛してる、コン!」

「わしも紳人のこと…心から愛しておるぞ!」

「あらあら♪」


尻尾をもふもふしながら見つめ合うお二人。


とっても熱々で、新婚さんでも照れちゃうくらい仲良しです。


……そろそろ混ぜてもらいましょうか!


「私も紳人のこと、愛してますよ〜」

「えっ!?」

「何じゃと!?紳人も顔を赤らめるでない!」

「いやこれは!」

「ふぬぅ!」

「ヌァァァァ!!」


揶揄うように私が言うと、それに反応した紳人にコンは頰を膨らませます。


そのまま慌てる彼の頭に尻尾を巻き付けりんごの芯のようになるまで締め付けられ、ガクンと紳人は気絶してしまいました。


ふふっ…嫉妬するコンも翻弄される紳人も、やっぱり可愛いです。


「ウカミ!あまり此奴を揶揄うでない…!」

「はい、ごめんなさいっ。でも私は紳人もコンも…愛してますから♪」

「……全く」


くすっと笑ってしまいながらそう言うと、ぱちくりと瞬きしたコンはやれやれとして見せながらも嬉しそうに目を細めるのでした。


今日もまた、幸せですねっ!

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