賑わいながら、深まる夜④
「よし、じゃあ一旦テレビゲームはストップだ。目を休めないとね」
「確かに!目は大切にしなくっちゃ」
黒縁の眼鏡を掛ける未子さんに言われたら、その説得力に頷くしかない。
ゲームが終わりテレビなどの電源を落とせば、俺の左右にコンとウカミがズレて座った。
顔には出さないけどやっぱり寂しく感じるなぁ…。
恥ずかしさより喜びの方が勝っていた時間も終わりを告げ、時刻は1時30分。
こんな時間なのに俺とコンたちは眠っておらず、更には未子さんたち友達の皆が我が家に居る。
不思議な気分だ。でも、凄く楽しい!
再度全員の顔を見渡すと流石に少しだけ眠気を滲ませている気がする。
「最後は皆で簡単なゲームをして眠ろうか」
今度の俺の提案には、誰からも否定は浮かばなかった。
しかし何をしようか…ツイスターはもうやったし、テレビを使わないゲームとなると?
キョロキョロと周囲を見回してみれば、ふと台所の箸立てが目に入った。
箸…ゲーム…。そうか!
電気閃き発明王な気分でピコンと思い付き、台所の引き出しから何本か割り箸を取り出して皆に見せる。
「王様ゲームをしよう!」
「ほう、王様ゲームとな」
「ピッタリですね♪」
面白そうだとばかりにコンとウカミが反応する。
正直、神様である
割り箸を割って人数分揃えてから、その先端に1〜6の数字と王の文字を書き加えた。
最後に皆が引いても怪我しないようコップに入れれば、これで準備完了。
「皆ルールは分かってるね?王様だ〜れだ!ってこれを引いて、王って書かれてる箸を引いた人が王様。番号を指定して命令したら、もう一度引き直す。これの繰り返しだ。
長くなってもアレだし、3回くらいで終わりにしよう」
「つまりチャンスは3回か」
「確率は低そうです…!」
「恨みっこなし、だね」
意気揚々と全員が俺の差し出した箸を一本選び、最後に残ったものを俺が選んだ。
残り物には福があるの精神で!
「せーの!」
『王様だ〜れだ!』
〜〜〜〜〜
「いや〜楽しかったね、王様ゲーム!」
「あぁ全くだな!」
「うん、そう…だね…!」
3回の王様ゲームを終えて就寝のため、男女で分かれて2階の部屋に入った。
此方は男子部屋。三人布団を敷いてその上に座りながら、興奮冷めやらぬとばかりに頷き合う。
「まさかメイド服を生で見られるなんてね!」
「俺もチャイナ服が出てきた時は驚いたぜ!」
「王様ゲーム、凄い…!」
異様なまでの会話の熱。まるでそれは…何かを忘れてしまいたいみたいで。
「……唯一残念なのは」
暫く高らかに笑い合っていた俺たちは、やがて苦々しい顔で自分たちの姿を見下ろした。
そう…今この部屋は、メイド服(ヘッドドレス付き)を着た俺、チャイナ服を着た悟、海兵隊の制服を着た明の三人が集まっているのである。
「着せられたのが俺たちだったということだね…」
「見事に全部女子が引いたな…」
「番号も、ピンポイント…」
王様ゲームの結果は、コン、ウカミ、真奈ちゃんの三人だった。
そして命令は何故か、指定した番号の人が用意された衣装を寝る前まで着るというもので一貫していたんだ。
「着替えようか。今回は運が無かったんだよ」
「しょうがねぇ、そんなこともあるだろ」
「次は…負けない」
何だかんだで本当に楽しかったねと笑い合い、俺たち三人はおやすみを言って就寝。
翌朝、目が覚めたら俺は女子組のコンの布団で彼女と一緒に添い寝をしていた。
それでまた一騒動あったけれど…とりあえず、お泊まり会は夕方に解散となり皆は自宅へと帰っていく。
「どうじゃった、紳人。楽しめたか?」
「あぁ…最高だったよ!コンとウカミのお陰だ」
「ふふっ♪私たちも楽しかったです、ね?コン」
「うむっ!勿論じゃとも」
「また皆を呼んでやりたいね」
「「女装を?」」
「お泊まり会を!」
瞬きをする間にいつも通りの我が家へと戻っていく中で、コンやウカミにこれまたいつも通り揶揄われた。
イベントがある日もない日も。どちらも等しく幸せなんだな、そう思えたお泊まり会なのだった。
明日は、何が待っているんだろう?
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