賑わいながら、深まる夜②
「お、これだこれ。最大四人だから、二人一組になれば行けるかな?」
「おいそれ絶対俺一人じゃねぇか!」
「そんなことないよ。悟と明だったり、他の女の子と組むことも出来るかもしれないでしょ!」
我ながら良い案だと思ったけど、笑顔の提案に悟から全力で待ったがかけられた。
「いーや間違いない!」
「じゃあ皆に聞いてみようよ」
「やめないか!」
「なして!?」
「未来が見えるからだ!」
「
「はっ倒すぞ!?」
どうやら機神の兵隊と戦いに行くわけではないらしい。悟の気持ちが伝わってきたよ!
まぁ冗談は置いといて。
「組み合わせは後で決めるとして、まずはゲームを起動…」
「弟くん。ちょっと待ってくださいね」
「うん?どったの、姉さん」
ゲームが始まれば悟も大人しくなるよね、と話を進めたら今度はウカミからストップが。
彼女は神様かつ教師だし、誰と組んでも組まなくても楽しめそうだけど…。
俺にしか見えない白銀の尻尾を揺らしてにっこりと微笑みを浮かべるウカミ。
一見人当たりの良さそうな雰囲気だが。
俺には分かる、これは確実に…俺を揶揄う時のやつだ!
逃げるしかない!でも何処に?いや、この際何処だって良い!とにかく今は逃げなければ!
「散ッ!」
「あら、急に走ると…」
弾かれるようにリビングから逃げ出した俺の足を、パシッ!と白銀の尻尾が絡め取る。
「わわっ!?」
一秒と経たず捕縛されてしまった俺はバランスを崩し、勢いそのままにリビングの床に倒れ込む。
反射的に目を固く瞑り衝撃に備えた。
けれど、訪れた感触は冷たいフローリングではなく。
モフッと柔らかな毛並みと仄かな花のような香りのするモフモフだった。
間違いない、これは…コンの自慢の尻尾。
「気を付けるのじゃよ、紳人。はしゃぐのは良いが怪我をしては折角の皆の気分が下がってしまうからな」
「弟くんったら可愛いんですから♪」
「あ、うん…ありがとうコン、姉さん。気を付けるね」
皆もあははと軽く笑ってくれたので、大したことはないという空気に弛緩する。
角度的に悟たちからは不自然に浮いたようには見えなかったらしい…オカルト的に誤魔化す必要がなくて助かった。
「ところで弟くん」
「はい何でしょう」
「先程、ババ抜きで最下位でしたよね?」
「そう…だね」
「罰ゲーム。あった方が、盛り上がると思うんです」
「それはどうかな?」
『罰ゲームイェェェェェイ!』
まさかの満場一致で罰ゲームが受け入れられた!?ええい、自分たちは食らわないからと!
「罰ゲーム、しましょうか♪」
「遺恨が残らないやつで…お願いします…」
駄々を捏ねるのも情けないし、何よりコンまで皆と一緒に目を輝かせて楽しそうなんだ。
水を差すことはできない…多少の恥くらい、俺は受け入れるよ!
そう覚悟を決め、やがて腕を組んで判決を待つ。
「では…こうしましょう」
スッと立ち上がったウカミは何を思ったか俺の真後ろへ。
そしてそのまま…むぎゅっと、後ろから俺を抱き締めた。
「「へ?」」
「ぬやっ!?」
「「わぁ…」」
悟と真奈ちゃん、コン、未子さんと明の其々が目を丸くして思わず唖然とする。
「ね、姉さん!何を…!?」
「次のゲームの間、私が良いと言うまでこのまま遊んでもらいます。これなら恥ずかしいし遺恨も残らない…ですよね?」
「そうだけどこの恥ずかしさはなんて言うか!」
罰ゲームと呼ぶにはベクトルが違う気がする。とは、言えなかった。
「むむむぅ…!」
その場の過半数に、並々ならぬ視線を注がれているから。
「紳人、くん…その…」
「頑張れ…で、良いのかな?」
明と未子さんだけは微苦笑して見守ってくれるのだった。
ウカミの体温は…ほんのりと、温かい。
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