第49話
賑わいながら、深まる夜①
「さぁ、引きなよ悟。君はもう…運命の岐路に立たされてるんだから」
「ぬかせ紳人!引かれる側のお前も、裏を返せば引く側なんだぜ…!」
お互いおかしなテンションになりながら、俺は二枚悟は一枚のカードを握り締める。
俺たち二人は一枚のテーブルを挟んで睨み合い、その手元には散りばめられた役目を終えた者たちが、生贄を求めるように見上げていた。
「此奴ら、何回同じ会話してるのじゃ…」
「もう3回は繰り返してますね」
「片や天然で片やシンプルにそういう駆け引きが出来ないからかなぁ?」
「えっと…が、頑張れ…」
「お兄さんも田村さんもファイト〜」
周囲からやや呆れ混じりの声援を頂戴しいよいよ佳境なんだと理解する。
さぁ、勝負だ!
カッと目を見開いた悟は、俺の手札から一枚を選ぶ。
そしてシュッ!と大きく引き抜いたそれは…。
「よっしゃぁぁぁぁ!!」
「お前に負けるなら、悔いはないさ…!」
ジョーカーを除く最後の一枚、♡のA。
それは大きくガッツポーズを取った悟の手札で、ピッタリとペアとなり。
ジョーカーを最後まで保持していた俺は…ババ抜きのルールに従い、最下位になってしまうのだった。
今は食事と片付けを終えた20時前後。
やるべきことは終わっているので、後顧の憂いなく皆で遊んでいる最中だ。
「くぅ…まさか俺が、こんなにトランプが弱いとは!」
「まぁそんなこともあるじゃろう。手札の巡りによるところも多いのではないか?」
「ん〜確かに、俺の手札だけ5枚あったもんね」
コンに言われてふと開始時点のことを思い出す。
しっかりシャッフルして配ったつもりだったはずが、皆3〜4枚の手札だったのに俺の手札だけ5枚だったのである。
それが全てとは言わないけれど、ビリになった要因の一つには数えられるかもしれない。
「まぁ、いっか!とりあえずこの後はどうする?皆自由に過ごしても良いけど…」
「折角なら皆で出来ることしたいですよね〜」
真奈ちゃんがうんうんと頷く。
俺の言わんとしていることを理解してくれたらしい、皆の顔を眺めながら言葉を引き継いだ。
「何か他にゲームは無いのか?」
「では皆でパーティゲームをしましょうか♪」
「面白そうですね!」
悟の何気ない言葉にウカミが反応し、その後続けて未子さんが目を輝せ手を打ち合わせる。
「パーティゲーム、幾つかあるけどどういうやつがいいとかある?」
「僕は…皆と一緒なら、何でも」
旅行用に売ったゲームは殆ど一人用で、多人数で出来る奴は残しておいたから色々あるはずだ。
ガサゴソとゲームソフトをテーブル下の引き出しから取り出す中、何事かを考えるように腕を組んでいたコンが!と尻尾を立てるとドヤ顔で俺に宣言する。
「リンク•スターt」
「パーティゲームってそういうことじゃないよ!?」
ゲームであっても遊びじゃなくなるところだった…ヘルメット型のハードウェアには、気を付けようね!
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