豪邸と、混迷と④
「おかえりなのじゃ!ご飯にするかの?それとも風呂か?それともぉ…わ•し•か?♪」
「「どどどどういうことだ(ですか)!?」」
エプロン姿のコンが俺を出迎え、パチリとウィンクするものだから俺のキャパシティは容易くオーバーしてしまう。
悟と真奈ちゃんに左右から詰め寄られた気がするけど、それどころではない。
俺……結婚してたんだ……!
「……のう、紳人。何か言っては」
「いえ…コン。よく見てください」
「んむ?」
「弟くん、フリーズしてます」
『あぁ……』
何も考えられなくなった俺以外、全員が納得の吐息を溢す。
夢みたいだ…生きてて良かった!
「紳人くん…大丈夫…?」
「ハッ!?俺の毎日のお味噌汁は!?」
明にポンポンと肩を叩かれ、ふと我に返る。
一瞬薔薇色の新婚生活が繰り広げられていたがそれはもう少し先の話だ。
今はひとまず…皆を我が家に招待するとしよう。
「さぁどうぞ!皆入って入って!」
『お邪魔しま〜す』
口々に挨拶しながら、一人一人中へと入りコンとウカミに招き入れられていく。
「……ねぇ紳人くん。凄いその…改築したんだね?」
本来の我が家を知っている未子さんは終始ぱちくりと目を瞬かせていた。
けれど最後に我が家へと入ると、靴を脱ぎながら微苦笑を溢す。
「うん…コンたちが張り切っちゃったみたいで。俺も間取り分からないや」
「ふふっ。楽しいお泊まり会になりそうだね!」
その言葉には素直に頷きを返した。
人も神様も隔てなく、楽しい時間になるといいな…そんなことを考えながら再度迎えに来たコンに手を引かれ、帰宅する。
『……流石に本気出しすぎじゃないのか?』
『何?本当の神守殿の家は、このような形ではないのか!?』
『マンションの一室がこんなに広いわけ無いだろう。他の奴らは、そういう間取りなのだろうと思っているみたいだが…』
荷物をリビングの隅に寄せ置き、早速探検し始める面々を眺めつつトコノメとラスマが話し始める。
「未子さんやトコノメからしても変わりすぎなんだから、俺から見ても変わりすぎって思うのも仕方ないよね」
『やれやれ…まぁ、此処は感謝しておくとしよう。ラスマもそうだろう?』
『うむ!お泊まり会なるものは明も自分も初めて。存分に楽しませてもらおう!』
「なるほど。それじゃあ、いらっしゃい。ゆっくりしていってね!」
くすっと笑顔になる
思えば彼らは俺がコン以外で最初に知り合った神様たち。
ウカミよりも一歩早く出会い、共に過ごしている。
何だかんだで縁の深い間柄だね。
「紳人、何をしておる。皆2階へ向かったぞ?」
「俺も2階がどんな感じなのか気になるな…おかしな部屋は無いよね?」
「何か変と言われるような部屋は無いはずじゃ!」
ムンっと自信満々なコン。しかし、その様子とウカミも一緒に空間を弄ったという事実がどうにも胸をざわつかせる。
それもあってあまり動きたく無いんだけど…何か詰め寄られたら言い逃れ出来ないかもしれないし。
まぁ、今更かな。お泊まり会するんだし、多少はノリで誤魔化せるだろう!
「さぁ行くぞっ」
「あぁ、分かったよ」
キュッと自然と繋いだ手に導かれるまま、俺は未知なる2階へと足を踏み入れるのだった。
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