豪邸と、混迷と③

未子さんや真奈ちゃんとスーパーで会った、その日の夜。


俺とコンは残りの英語と数学のプリントを前もって終わらせた。


明後日には宿題完了も狙うお泊まり会をするとはいえ、恐らく殆ど進まない…或いは容易く済んでしまうから監視役に回ろうという狙いである。


悟が真面目にやるとは思えない。加えて、明が彼の押しに負けて宿題の手を止めてしまうかも。


未子さんは頭も良いし計画性もある。


恐らく、俺たちと同じで終わらせてくるんじゃないかな?


つまり…懸念点は悟ただ一人!


「春休みもあと10日以上あるんだ!遊ぼうぜ!」


そんなことを宿題と向き合わせてから5分と待たず言いかねないから、俺とコンは監視役を買って出るのだ。


学校のある五日の内三日は少なくとも命を狙ってくる悪友だけど。


後顧の憂いなく春休みを楽しんでもらうため、一肌脱ぐとしよう。


こう、時代劇風にグイッとね。


「脱ぎ方は重要では無いと思うのじゃ…」


あれま。


まぁそんなこんなで1日を終え、その翌日は準備を…と思っていたのだが。


「私とコンであれば5分もくだされば、あっという間に終わりますよ♪」


と、何やら上機嫌に微笑み尻尾を揺らすウカミとコンに言われたので、スペースの問題は二神ふたりに一任して。


お菓子とかあった方が良いよね〜とか、飲み物も買っておきましょう〜とか相談しつつ再度スーパーで買い物をした。


因みに、布団なども心配要らないとのこと。


突発的かつ任せきりなのは申し訳ないが、旅行用の資金を切り崩すのも惜しい。


今度の旅行は目一杯楽しんでもらえるよう、其方を頑張ると決め今回は甘えさせてもらった。


そんなこんなであっという間に時間は過ぎ去って。


3月22日、お泊まり会当日と相なったのである。


〜〜〜〜〜


「どんな感じになるんだろう…それっぽく部屋を広げたり、増やしたりするのかな」


俺が迎えに行ってる最中に終わらせると、笑顔だけど何処か寂しそうなコンとニコニコ顔のウカミを家に残し一人学校へ。


時刻は12時30分。のんびり歩いて15分ほどなので、15分は事前に辿り着ける計算だ。


お泊まり会の会場となる家主が、集合に遅れるわけにも行かない。


それ故に余裕を持っての出発となる。


「お〜い!紳人〜!」

「紳人くん、早く早く!」

「お兄さんこっちですよ!」

「紳人、くん…こんにちは…!」

「あれ?皆早いね。集合時間間違えたかな?」


余裕だったはずが、いざ着いてみると既にそこには各々荷物を持った皆が揃っていた。


「いやぁ…どうやら皆、お泊まり会が楽しみで早めに来ちゃったんだと。当然俺もだ」

「なるほどね。お菓子とパーティゲームしかないけれど、楽しんでもらえれば幸いかな。悟は宿題終わらせてからね?」

「そんなバカな!?てか俺だけ!?」

「僕も宿題、一教科残してるから…一緒に頑張ろう」

「俺は全部だ…」


ガックリ肩を落とす悟に全員が声をあげて笑うと、両手で手提げ鞄を持つ真奈ちゃんと視線が重なる。


「そう言えば、二人も真奈ちゃんも一緒にお泊まり会するのは大丈夫?」

「はい!皆さん優しそうで、楽しみですっ!」

「僕も新しい友達ができて、嬉しいな…」

「こんな可愛い子となら大歓迎!何で紳人ばかりそういう知り合いがいるのかの方が気になるがな?」

「よぉしじゃあ皆、俺の家へしゅっぱ〜つ!」

「「「お〜!」」」

「無視かよ!」


わいのわいのとあまり広がらないよう気を付けながら、住宅街を通り抜け。


愛しの我が家に辿り着き…扉を開けた瞬間。


「なんじゃあこりゃぁぁぁ!?」


俺は叫び声を上げずにはいられなかった。


何と、扉の先は…立派な一軒家の内装になっていたのである!

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