豪邸と、混迷と②

「それじゃあ、準備もあるだろうし…明後日の23日、13時頃学校の前で集合にしよう。そこからだと俺の家も近いからね」

「分かった!私の方から二人には連絡しておくから、紳人くんたちは準備お願い。あと、本当にありがとう!」

「気にするでない、大船に乗ったつもりで良いぞ!」


細かい話がてら全員買い物を済ませ、スーパーの前で未子さんとトコノメとは背向かいに別れた。


「……んで、どうして真奈ちゃんは一緒に来るんだい?確か君の家の方角なら、未子さんたちと一緒の方が近いはずだよ」

「そんな、酷いですお兄さん!私とは遊びだったの!?」

「前後の脈絡は何処へ!?」


顔を真っ青にして両手で顔を隠し項垂れる真奈ちゃん。


流石に予想外のリアクション過ぎたので、思わず足が止まってしまう。


「冗談ですっ♪でも、私も参加したいなぁ…」

「真奈ちゃんも?」


危うくこの季節に冷や汗をかくところだった。


ニヒッと無邪気に笑った真奈ちゃんはうーんと考えながらも、可愛らしく顎に指を当てて羨ましそうに目を細めて言う。


広さの問題が凡そ解決したようなものだし、幸いにも真奈ちゃんのご両親とも面識があるので何処ぞの馬の骨ではない。


しかし、だ。


「真奈さん。貴女は私たち以外と知り合いではないですが…よろしいのですか?」


ウカミが心配そうに真奈ちゃんに声を掛ける。


そう。彼女は俺たちや未子さんは友人だけど、明や悟とは完全な初対面である。


そんな状況下でのびのびとお泊まり会を楽しめるかな…なんて心配をしていると。


「お兄さんが一緒なら大丈夫です!」

「うぉっまぶしっ!」


突然の全幅の信頼を向けられてしまった。


この眩しさ、サングラスが欲しくなるね。


「まぁそう心配せずとも間も無く高校へと入学して来るのじゃ。先んじて顔合わせをしておくのも、悪い話ではなかろう」

「コン…それもそうだね」


最初から学校に知り合いがいれば、新しい学校生活も安心だし。


「それじゃあ真奈ちゃん、お父さんたちに話しておいてね。必要ならこれが俺の電話番号だから、いつでも連絡して」

「ありがとう!すっごく楽しみ…明後日の13時、大社高校前で待ってるね〜!」


ブンブンと此方を振り向きつつ大手を振って駆けていく元気な真奈ちゃん。


「こら!ちゃんと前を見ないと危ないよ〜!…ふふ、可愛いなぁ」


何だか本当に元気な妹を見ているみたいでほっこりする。


やはり未子さんたちの方へと走り去る真奈ちゃんの影を見守っていると、ふと突き刺さるような視線を感じた。


「ぶぇっ」


というより、思い切りもふっ!と柔らかな尻尾で頰を突かれた。


当然コンの尻尾である。


「むむ〜!」

「大丈夫だよコン。今のは猫を可愛いって言うようなもので、恋愛感情的な可愛いはコン以外には絶対に言わないから」

「……信じておるからな」

「あぁ。きみに誓って」

「あらあら…お熱いんですから♪」


誰よりも1番可愛いのは、いつだってコンだよ。


そう内心で呟きながら膨れ面のコンを優しく撫でてあげるのだった。

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