団欒は、甘く揺れて④

「そうなんです!デートなんですよ〜♪」

「ウカミ!?」


むぎゅっと腕を組む、どころか自分の胸に抱き寄せるようにするウカミに声が上擦ってしまった。


その体温や熱に肌の柔らかさが着物越しでも鮮明に伝わる。


あぁ…何だか良い匂いが

「殺気!?」


頭で理解するよりも先に反射的にウカミから体一つ分距離を取れば、俺の腰にしゅるる!と何かが巻き付いた。


言わずもがな、コンの尻尾である。


「紳人はわしの旦那様なのじゃ!」

「み、未来のだけどね…」


あと一瞬離れるのが遅かったら確実にスーパーの真ん中で大往生するところだった…我ながら褒めてあげたい。


ぷくっと頬を膨らませるコンの頭を優しく撫でながら、未子さんを振り向き話を進めた。


「デートかどうかは置いておくとして。未子さんこそどうしたの?」

「私は夕ご飯のメニュー考えながら買い物かな。あ、そうだ!紳人くんたちに聞きたいことがあったの!」

「ほほぅ、何じゃ?大きな願い事であれば聞いてやるのは難しいが」

「ううんそうじゃなくて。今度、皆でお泊まり会しようって話になったから一緒にどうかな?」


未子さんが言うにはそそくさと俺たち三人が終業式から帰宅していた頃、未子さんや悟と明の三人で春休み中に皆で何かしたいと話していたみたい。


けれど高校生たちだけで旅行も難しく、代わりに誰かの家に集まって宿題を終わらせる名目でお泊まり会をすることに決めた。


ただ、誰の家に集まるかという根本的な問題で躓いてしまう。


そんな時我が家に白羽の矢が立って、俺の都合などを数日中に相談する予定だったところに俺たちが現れた…という訳だ。


「俺は良いけれど、コンとウカミはどう?」


神様たちとのお泊まり会、というのはあまりに尊いホストで真実を知ったら悟たちはビックリするよね…。


「ふむ…わしらは構わぬが」

「弟くん、6人はちょっと狭いかもしれませんよ」

「あぁ、そっか」


ついうっかりしていた。


楽しそうだということばかり考えて、実際に家の中に入った時のことまで想像してなかったな…。


流石は神様たち、本当に頼りになる。


「うーん…とはいえ、お泊まり会なんて楽しそうな企画。お流れにするには勿体無いよなぁ」


俺もコンも、そして未子さんも頭を悩ませウカミとトコノメが微笑ましそうにそれを見守る中。


「お兄さん!」

「ん?あぁ…君は」


ふと、背後から女の子の声で呼びかけられた。


振り返っても誰もいないので首を傾げ視線を下に落とすと、薄い茶色のポニーテールの髪を揺らして俺を見上げる大きな眼差し。


まだ記憶に新しいその少女の名前は。


「真奈ちゃん!こんにちは、皆は元気かい?」

「はいっ!お父さんもお母さんも…勿論私も、元気いっぱいです」


人懐っこそうな笑みで俺に一歩近付いてきた彼女は、心音こころね真奈まな


以前、彼女と話をしてみたいと願った守護神関係のトラブルを解決して交流を持った。


あれからは学校だったり此方にいない時も多かったので会う機会は無かったんだけど、世界は意外と狭いね。


今日は知り合いによく会う楽しい日だ。


「お兄さん…コンちゃん以外の女の人増えてるね、皆神様?」


何故か少し棘を感じる視線と口調で、俺は再開早々詰め寄られることになってしまった。


真奈ちゃん…お兄さんはそんな悪い人じゃないよ?


そんな呟きを、口にする勇気は無かったのだった……。

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