団欒は、甘く揺れて②

「なるほど、旅行かぁ。よぉし今回もお金を」

「待って待って流石に悪いから!俺のゲーム売ってお金稼ぐつもりだったんだよ!」


ゴソゴソと自らの鞄を弄り始めた父さんを前のめりで止めに入る。


前回のマノトが切り盛りする『仰慕ケ窟』の時は、両親の優しさに甘える形で旅行資金を出してもらった。


これ以上甘えるわけにはいかないし親の財布頼りな生活なんてしたくない。


「あら。遠慮しなくて良いのよ?神様と言ったって、コンさんたちは私たちの娘でもあるんだから」

「母上…!」


キラキラと目を輝かせて母さんを見るコン。


相手方の母親に認めてもらえたと、尻尾がブンブンと可愛らしく揺れている。


ウカミも耳を小さく揺れ動かし微笑みを絶やさない。


「でも…」

「はは、頑固だな。けれど自分が言ったことを簡単に曲げないのは、良いことだぞ。


こうしよう。もしゲームを売って足りないと思ったら、その時こそ頼りなさい」

「……分かった。父さん、母さん。いざとなったら頼らせてね」


コンとウカミに懐事情を気にして旅行されることこそ、何よりも避けるべきだ。


あと新幹線代が足りない、とか言ったら間違いなく『神隔世』の門を使われてしまう。


便利ではあるけれどそれはそれで寂しい気もする。


移動する道すがらも、二神ふたりには楽しんでもらいたい。


正真正銘の最終手段として使わせてもらおうかな。


どうか足りますように…!


「そういえば、お二人はこの後どうなさるんですか?」

「よく聞いてくれたウカミさん!」


人差し指でタン!と小気味良く机を叩いた父さんは、隣の母さんの肩をそっと抱き寄せ子供のような笑顔を見せてこう言った。


「この後父さんたちも旅行に行くんだよ、新婚旅行に行ったところをもう一度巡ろうと思ってな」

「振り返りながらの旅も乙なものでしょう?」

「確かに。道中、気を付けてね」

「あぁ…勿論だとも」


自前の車での遠出のはず。道中の安全には、本当に気を付けてほしい。


そこさえ気を付けてくれたら他に心配することはないね。


いつまでも新婚のように仲良しだし、羽目を外しすぎるような両親でもないのだから。


「紳人も気を付けろよ」

「うん!ありがとう、父さ」

「意外と出先で盛り上がって…ということもあるからな。アレは持っていけよ」

「何の話!?」

「それは勿論」

「ぁぁベタベタすぎるから!」


どうしてこう、この人たちは良い話で終わらせられないのかなあ!?


尊敬する父さんと母さんではあるけれど、時たま世間一般の両親とはズレたものを感じる。


「……紳人は意外と甘えん坊だから、沢山甘やかしてあげたらコロッと落ちるわ。頑張って!」

「分かったのじゃ!忠言、痛み入る…!」


俺と父さんがヤイヤイと話してる側で、コンたちと母さんが何か内緒話をしている気がしたけど。


聞いてはいけないことの気がしたので、遮二無二聞かなかったことにした。

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