第46話

団欒は、甘く揺れて①

「さぁて…今日は何しようかな」


本日、3月21日。記念すべき春休み初日である。


昨日夕方に『神隔世』から帰り着いてから、足早に国語、社会、理科のプリントは終わらせた。


残り約2週間であと二教科終わらせれば良いのだから安いものだね。


「京の都も良いが、香川のうどんも食べてみたいのう!」

「この沼津の深海プリンというのも綺麗ですよ♪」


コンも昨日の内に俺と同じ三教科を終わらせ、今はウカミと一緒に旅行雑誌をちゃぶ台型テーブルいっぱいに広げている。


もしかしなくても、この春休みは家に居ることの方が少ないかもしれない…。


軍資金持つかな?いざとなったらゲーム売れば良いから、心配は要らないけど。


コンやウカミと暮らし始めてから一人きりになることは無くなった。


だから最近はめっきりプレイしておらず、いつまでも我が家で眠らせておくよりよっぽど良いだろう。


よし!今日はゲームを売って、軍資金稼ぎの日にするかな!


こうしてはいられない。コンたちには好きに行き先を決めてもらって、その間でパパッと済ませよう。


---ピーンポーン---


「ん?」

「むっ…紳人、何か買い物したのじゃ?」

「いや特には。誰だろう」


よっこいせと立ち上がり玄関の前へと立つ。


近所用のクロッカスに片足を入れ、ドアの覗き穴からインターホンを押した人物を見た。


そこに立っていたのは……。


『紳人〜?コンさん、ウカミさ〜ん?留守か〜い』

『居なかったら返事して〜』


いやそれ居るから返事できないやつぅ!


正体は何やら紙袋を手に持った、俺の父さんと母さんだった。


「……居るけど返事するよ、父さん母さん」

「お、おはよう紳人!今日から春休みだったよな?」

「これはこれは。紳人の父上と母上ではないか、いらっしゃいなのじゃ」

「ご無沙汰しております〜」

「コンさんもウカミさんも相変わらず綺麗ね。羨ましいわ」


もうすっかり神守家が板に付いてきたコンとウカミ、そして今なお平然と受け入れているのが未だに信じられない我が両親。


自分の見ている光景と置かれている立場が可笑しくて。自然と口角が緩む中、立ち話も何なので招き入れた。


机を囲んで俺の左右にコンとウカミ、対面に父さんと母さんが並んで座る。


そして早速、その手荷物を此方に差し出してきた。


「この匂い…もしや!?」


クンクンと匂いを嗅いだコンが目の色を変えてガサゴソと袋から中身を取り出す。


梱包されているのを丁寧にしかして素早く開けば、この辺りでは有名な美味しいプリン屋さんのプリンが三つ入っているではないか。


「母上様、此方はかなり入手が困難と言われていませんでしたか…?」

「うふふ。息子の奥さんと愛人さんに渡すプレゼントだもの、張り切っちゃった!」


ウカミまでもフリフリと俺にしか見えていない尻尾を揺らし、目を見開いている。


「ウカミは姉だからね!?最初に会った時の冗談間に受けたら駄目だよ!」

「何だ紳人、男ならばそれくらい」

「父さんが言ったら収拾つかないからやめてぇ!」


そして俺もまた、プリンとは違う理由で声を荒げてしまうのだった。

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