春の訪れ、桜は何処へ②
「さて帰ろうか」
「うむ、そうじゃの!」
「はいっ」
その内奴らも目を覚ますだろうしそうなる前に逃げなければ。
コンとウカミを連れ立って三人で教室を出て、そのまま玄関から校門を抜けて学校の外へと出る。
「それにしても…春休みかぁ。宿題は精々5教科の両面プリントが一枚ずつだし、4月7日の始業式までは自由に過ごせそうだね」
宿題といっても軽い振り返り用のプリントだから手間取ることもない。
あの未子さんも交えての勉強会で、かなり地頭が底上げされたようだ。全部合わせても1日あれば解き終えるだろう。
国語なんて簡単すぎて、素麺みたいなもんだぜ!
「紳人といっぱい過ごせるな♪」
「日中は三人で色んなところを周りましょう!」
「おぉ旅行か!今回は純粋に現世を漫遊するのも悪くないのじゃ」
「お金あるかなぁ…」
「そこはほれ、あの門じゃよ。『神隔世』経由なら何処でも好きなところに開けられるからの」
「そんな感覚で使って良いものなの…?」
まぁそれは最終手段として考えておこう。
可能な限り、コンたちに頼りきりにはしたくない。
心の何処かで道中も旅の醍醐味だと思う気持ちもあるしね。
コンとウカミが一緒なら、どんな旅路でも退屈だけはしないだろう…それを楽しむもまた、一興だ。
ほら…そんな俺たちを、満開の桜並木がこんなにも祝ってくれているんだし。
きっと良い春休みに!
「って何で桜!?まだ時期的にも早いんだけど!?」
「んむ?それもそうじゃな…」
「確かにおかしいです!」
意外と神様は変化に鈍感なのかな?
或いは『
不意の満開の桜に足を止め見渡す。
「……ん?」
すると、誰かがとある桜の木の枝にもたれかかるように座っているのが分かった。
顔の方は満開の桜に隠れてよく見えないけど…。
「おや、これはこれは…神を侍らせながら別の神を見上げるとんでもない人間くんが居たものだ」
「誤解ですぅ!」
突然人聞きの悪いことを言われ慌てて否定する。
あぁやめて!そんな目で俺を見ないで二神とも!揶揄うのも程々にお願いします!
橙色に揺れるコンと白銀に靡くウカミにジト目で見つめられ、居たたまれなさの中で何とか俺は声を上げた。
「お初にお目にかかります!俺…いえ自分は神守紳人と言います!」
「うむうむ、礼儀がなっておるのは良いことよ。いやぁすまぬすまぬ。楽しそうだったからつい揶揄ってしもうたわ」
くつくつと笑い声が上がると軽やかにその神様は俺たちの前に舞い降りた。
それはまるで、桜の花びらが舞い散るかのように。
「やぁ神守紳人、それにコンとウカミ。私の名前はサオリだ…よろしく頼むぞ!」
背丈はコンと殆ど同格だが、艶のある茶色の髪と桜色の瞳からは絶世の美女とも呼ぶべき雰囲気が放たれている。
そのえくぼや丈の短い黄色の和服は幼さを感じさせ、サオリの神々しさや妖しさを存分に醸し出していた。
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