憂う心、微笑む者④

「プリンは何故こんなにも早く、わしのお腹に消えてしまうのじゃ…」

「それは、食べるから」

「本当不思議ですよね〜」

「ウカミまで!ペロッと食べたからだよね!?」


コンは腕を組みながら、ウカミは頰に手を当てながら心底謎だとばかりに頭を悩ませる。


火を見るより明らかどころか最早明々白々のレベルなのだが…神様基準だとかえって見えないのかもしれない。


「いや、待て紳人、そしてウカミよ。わしは気付いてしまったかもしれぬ…!」

「本当ですか!?」

「おぉ…最初っから俺が言ってたけど分かってくれたんだね」


もしかしたら俺の出す音だけ奪われた?とも一瞬思った。


けれどその心配、ついでにコンたちが目の前にある真実を見誤る心配もしなくて済みそうである。


この世の真理を解き明かしたとばかりに真剣な顔つきになったコン。


彼女はあろうことか、俺を隣からビシリと指差しこんなことを言ってきた。


「紳人がわしらのプリンだけすぐ無くなるように仕向けておったのじゃ!」

「…何だって?」


舞い降りた理不尽に俺の頭が理解を拒む。


「こればかりは許しませんよ紳人!」

「何だってぇ!?」


もしかしなくともこの二神ふたり、プリンのことになると思考がプルプルしてしまうの?


おかしいな…神様は病気になることはないはず。


てことは。これ正気の沙汰なのか!?


「冤罪、冤罪だよ!誰か俺の弁護してくれる人はいないの!」

「大丈夫じゃ紳人。ここは裁判所ではない、取調室じゃからな」

「カツ丼食べますか?」

「晩御飯後なのでお腹いっぱいです…」


何ということでしょう。


我が家のお茶の間が、いつの間にか太陽に吠えたくなるような一室に早変わりしたではありませんか。


誰か…誰か助けて…!


「なぁんての♪」

「え?」

「ごめんなさい、紳人の反応が可愛かったのでつい…遊んでしまいましたっ」

「何じゃとて!?」


コンとウカミが揃って悪戯成功とばかりにチロリと舌を見せ肩を竦める。


「……いきなりのそれは心臓に悪いと思うな」

「ほら、よく言うではないか。家庭円満の秘訣は」

「偶の刺激と」

「こういうことじゃない気がするけど!」


まぁ…良しとしよう。


他の男にちょっかいをかけて此方の嫉妬心を煽られるよりはよっぽどマシだ。


そんなことをされたら…ズル休みがまた一日、増えてしまうかもしれないからね。


「それにしても…明日のプリンが楽しみじゃのう!」

「はい!明日は何プリンでしょう?」

「お楽しみということで、ここは一つ」


やっぱりプリンには目が無いらしいコンとウカミに、彼女たちからプリンを取り上げたらどうなるんだろうと微苦笑混じりに思うのだった。

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