番外編【どんな君でも、素敵だと②】

「って、あれ?もう他に衣装はないのに、扉は開いてない…これじゃあ出られないね」


コンが用意されていたメイドとシスターの衣装を見事に着こなした。


にも関わらず、部屋の鍵が開けられない。


「まさかウカミ…俺に女装をさせようと!?」

『それはそれで見てみたいですね♪』

「しまった墓穴か!」

『でも、今回は私じゃないんですよ〜』

「ウカミじゃない?なら…えっ?」

「そう!わしじゃよ!」


シスター服を着たままのコンがむふ〜!と得意げに胸を張る。


物凄く可愛い、新米シスター感があって沢山なでなでしたい。


っと…そんな欲望はさて置き。


「つまり、コンが今この部屋の主ってことか」

「うむ。そして思い出してみるのじゃ、この部屋は『コスプレを幾つかしないと出られない部屋』。


つまり、コスプレするのは何もわしだけではないということじゃ!


この機会にあまり紳人の見たことない姿を見せてもらおうと思うてな…?」

「お、お手柔らかに頼むよ」


むふふとニヤけながら手をワキワキさせるものだから、つい微苦笑を溢しながらもコンが望むのならと俺もコスプレする覚悟を決めた。


「それで。俺は何のコスプレをしたら良いの?」

「むふふ…まずはこれじゃ!」


ポン!と小さな煙と共にコンがその手の上に出したのは。


「執事服…タキシードか。なるほど、コンはメイド服を着てくれたものね」

「分かってくれるか!執事とメイドであれば、恋愛するのも自然じゃろう?♪」


一丁前のタキシードだった。正直服に着られるような気しかしないけど…馬子にも衣装を期待しよう。


「……」

「あの、コン?」

「何じゃ?気にせず着替えるが良いぞ」

「えっと、あの…」

「着替えるが良いぞ?」

「はい。いやでも」

「わしにお主の着替えを見せるのじゃあ!!」

「何とぉ!?」


タキシードを受け取りコンが背を向けるのを待っていたら、彼女は寧ろまじまじと此方を凝視してきた。


何とか振り向いてもらおうと粘るがコンは限界を迎えたらしい。


息を荒げながら俺に手のひらを向け、無理矢理着替えさせ始めてしまう。


互いに裸を見せ合い知らないところなんてないくらいではある…でも!やっぱり恥ずかしいものは、恥ずかしいんだ!


「うぅ…まぁこの際割り切ろう。それでコン、どうかな?いや。どうですか、『お嬢様』」

「-----」


恥ずかしさが限界を超える。全て…振り切るぜ!


右手を自分の胸に手を当てながら、意識してキリッとした表情と精一杯の声でコンに囁きかけた。


すると、ズガァン!!とどこかで雷が落ちたかのような音が響き…直後に、コンがポツリと呟く。


「格好…良すぎるのじゃあ…」

「こ、コン!?」


そしてかぁぁぁ…と耳まで顔を真っ赤にさせると、蕩けた眼差しのまま膝からパタリと崩れ落ちていった。


咄嗟に抱きかかえたコンの顔は、完全に緩み切っている。


気に入ってくれたのは嬉しいけれど…そこまで刺激が強かっただろうか?


俺が着てた普段着を畳んで即席の枕にすると、ガチャリと鍵が開く音が聞こえてきたのでコンを運び出そうとした時。


「私もお嬢様になりたいです!!」


バァン!と扉が開け放たれ、そこにはキョンシー姿だったはずのウカミが黒色のドレスを身に纏い爛々とした眼差しで立っていた。


「……とりあえず、コンを寝室に運んでからで良いですか?」


その後ウカミにあれこれ執事めいたことをしているうちに、コンも目を覚まし。


ウカミだけずるいと白いドレスに着替えてご奉仕を要求してきたのは…言うまでもないよね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る