番外編
番外編【どんな君でも、素敵だと①】
「おかえりなさいなのじゃ、ご主人様っ♡」
「……」
パチリとウィンクしつつ、やや長いスカートをコンは摘み上げた。
ある日『また』例の質問返答部屋へと連れられた俺とコン。
しかしそこにはお便りなんて一枚も来ておらず、机の上には何故か色んなコスプレ衣装が置かれていたのである。
今回はどうやら、『コスプレを幾つか着ないと出られない部屋』らしい。
因みにウカミは部屋の外でキョンシーの格好をしてるんだとか。
部屋の中にいる俺たちからそれは見れないんだけど…多分、分かって言ってるよね?
まぁ以上からとりあえず着てみるのじゃと言われ、コンの着替えを見ないよう後ろを向き。
背を向けてから暫し、着替えが終わったと言われて振り向いたそこには!
可愛いの化身が立っていたのである。
「コン」
「んむ?」
「俺一生ここから出られなくても良い…ずっとコンを見ていたい…」
「〜〜〜!愛してるのじゃ紳人ぉ!」
「俺も、コンを心から愛してるよ!」
感極まった様子でブンブン尻尾を振りながら俺の腕に飛び込んだコンを固く受け止め、ヘッドドレスをずらさないよう気を付けてその頭を撫でた。
『お二人とも、熱々なのは良いですがそれでは話が進みませんよ?それに今回は番外編で尺が無いので巻きでいきましょう♪』
「かなりメタくない!?」
「尺とな?このクラシックなメイド服も着やすかったのじゃが…仕方ないのう、ほれ!」
「わー!!」
スポーン!とメイド服を脱ぎ何故かそれを俺に手渡し、白い下着姿のコンは違う衣装へと着替え始める。
この服…コンの匂いと熱を感じるな。
性的興奮というより芳香剤に感じる安らぎのようなものを。
嗅いでみたくなるが、流石に絵面がへんたいすぎるので控えた。
『嗅いでも私は気にしませんよ?』
(許してください…)
ウカミの声が脳裏に響き、こっそりと返しながらメイド服を畳んで机の上に置く。
しかし…可愛かったなあ。
クラシックメイドなので、スカート丈は長く黒と白を貴重としたその姿はコンの橙色の髪と金色の瞳に凄く似合って見えた。
今度またお願いしようかなと思案していると。
「うむ、良いぞ。此方を見ておくれ紳人!」
「分かった」
言われるままにコンへ振り返る…が、コンの姿が見えない。
ふと視線を下へ落とすとそこにコンは居て、両手を合わせ祈るように目を閉じている。
今度は殆ど黒い格好で、敬虔なる印象を感じさせるその衣装は。
「主よ…その御心に感謝するのじゃ」
「それは、シスターさんだね?」
ゆっくりと立ち上がり耳と尻尾を揺らめかせる様は、最早コンそのものが神々しい雰囲気を放っている。
神様だから当然だけど。
「わしが神に祈るというのもおかしな話じゃが。ま、偶には敬う立場になるのも悪くない…お主とは対等な関係が1番でありたいからの」
後ろ手に手を組み此方を覗くコンは、美しくて可愛い。
優しさに包まれる胸中のままその頭をポンポンと撫でると、瞳を細め小さく喉を鳴らして喜んでくれた。
「そういえば、今回の衣装はどちらもコンが奉仕する立ち位置だね」
「確かにそうじゃ。紳人は普段のわしとこの格好のわし、どちらが良い?」
自身の胸に手を当てて言うコン。
「おや。君にしては珍しいことを聞くね」
「何と」
「俺はコンを愛してるんだ。どんな衣装であろうとどんな形であろうと、君は君だ。俺はその全てを愛している」
「『……』」
コンは目を丸くし俺を見上げながら息を呑み、通信越しのウカミすらも静かになる気配。
……ちょっと格好つけ過ぎただろうか。
「そのどこまでも真っ直ぐなところは…紳人の魅力の一つじゃよ」
『はい、そうですね。見ている私でさえドキッとしちゃいました…』
「あ、ありがとう…」
へにゃりと赤くした頰を緩ませはにかむコンと、くすっと微笑んでいるであろうウカミ。
つい恥ずかしくて顔を赤くしながら俺はお礼を言うのだった。
……鍵はまだ空いていない。どうやらまだ、衣装は残っているようだ。
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