波打ち際、煌めく光②

「えっと…まだギリギリ春かなって季節で、泳げるようなところは何処も海開きしてないと思うんだけど」

「それに入れたとしても何処も水は冷たい…と、そういうことか。考えたのうウカミ」


ウキウキのウカミと対照的に難色を示す俺たちだったが、コンはふと意図することを理解したらしくポンと手を打つ。


思いつくとしたら温水プールとかだろうけど…ここら辺にそんなのあったかな?


流石に俺もそういう施設に明るくないのでパッとは出てこない。


行くとしたら今度の土日のはずだから、それまでに探すとしよう。


「いえ紳人、此方の海や施設ではありませんよ」

「ナチュラルに心読まれた!」

「顔に書いておるのじゃ」

「嘘ぉ!?」

「嘘じゃ♡」

「んがっ!」


いつものように手玉に取られているが、この際それは許そう。


パチリとウィンクするコンが可愛いから!


「気を取り直して…確か海や施設ではないって言ったよね。それってつまり…」

「はい!今度の土日で『神隔世』に行きましょう!向こうは一年中平穏な気候ですが、真夏のような場所も真冬のような場所も点在していますので」

「なるほどぉ。コン、向こうの海ってどんな感じなの?」

「基本的には此方と変わらぬが、そこの権能を持つ者次第では温かくも冷たくもなるのじゃ」


海の権能といえば、ツクヨミの二人が思い浮かぶけど…彼女たちは現実と『黄泉』の月と海であり、『神隔世』とは別なのだろう。


しかし、そうなると余程名高い神様でなければ海ほど大規模な土地は与えられないはず。


一体どんな神様が?


そう思案していると、いつの間にかくすっと微笑んだコンとウカミが俺の方を見ていた。


「……ん?」

「紳人、お主もよく知ってる神じゃよ」

「ヒントをあげるなら…海って、眩しいですよね♪」


クイズということか。個人的に嫌いじゃない、受けてたとう!


と言ったものの、何となく答えは出ているのだ。


俺がよく知っていて、海の眩しさから連想される神様といえば……そう。


「アマ様か」

「正解ですっ」

「お見事じゃ!」


パチパチとウカミとコンに拍手され、得意げにムンっと胸を張って喜びを見せた。


まぁそこまでの力量のある神様と言ったら、アマ様しかいないよね…。


彼女の土地であれば安心だ。思う存分、季節外れの海水浴を楽しませてもらおう。


和やかに談笑するコンたちを尻目に向こうの海に暫し思いを馳せ、すぐに意識を戻し。


三人で、主に俺に必要なものなどを見繕い始めた。楽しいものにしなければ勿体無いよね!


……そう思っていた時期が、俺にもありました。


〜〜〜〜〜


「ハァ、ハァ、ハァ……!」


3月14日、土曜日。俺は。


ギラギラと眩しくも肌に感じる温度は心地良い、不思議な太陽の下で。


「紳人はどこ行ったのじゃあ!!」

「えぇい、潮の匂いが絶妙に邪魔をして臭いを辿れぬ…!」

「彼の性格上、闇雲に遠くに行くとは思えません!」

「見つけ次第取り押さえ、その場で決めてもらいましょう!」


あのウカミまでも血相を変えコンやアマ様、コトさんたち四神よにんに砂浜や周辺の木々をくまなく探索されながら。


『誰とビーチバレーでチームを組むかを!』


……ビーチバレーのパートナー選びから、死に物狂いで逃げていた。


事の発端は今朝、アマ様の土地にあるこの海『綿津海わだつみ』に着いてから放たれたアマ様の一言に由来する…。

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