席替えと、そのまにまに②
「はい、皆さん注目です♪」
ついに、ウカミが何かの箱を持って教室へ来た。
真っ当に考えればあれは席替えのくじだと思うだろう。現に、クラスメイトの大半は目に見えて浮き足立っているではないか。
けれど俺とコンは平静を装いつつも内心で冷や汗が止まらない。
俺たちからしたらあの箱は楽しい席替えのくじ引きなんかじゃなくて、俺かコン或いは両方を弄ぶ恐ろしいパンドラの箱にしか見えないのだから。
「5限目は皆さんお楽しみの席替えです!
この箱からくじを引いて、書かれている出席番号の人のところに移ってもらいます」
淡々と笑顔で説明するウカミに思わず俺はコンと顔を見合わせる。
あのウカミが何の変哲もないくじ引きをするだって…?とてもじゃないが信じられない。
「やっぱり、二人の考えすぎだと思うよ?」
「う〜む。杞憂じゃったか」
「少し疑いすぎたみたいだね」
小声で未子さんが囁いてきた。彼女の言う通り、普段揶揄われているからと身構えすぎたかな。
ウカミは悪戯好きではあるけれど真っ当な神様でもある。
良かった、どうやらまともに先生をしてくれるみたいだ。
「でもそれだとちょっと物足りないですよね」
「ん?」
流れ変わったな。
「なので!クイズ大会しましょう!今から五問出すので、正解出来た五人は好きな席を選べます。他の人はくじ引きでどうでしょう?」
『さんせ〜い!』
『面白そう!』
『クイズは得意だぜ』
予想通りの展開になった。皆も乗り気なようだし、ただのクイズであれば存分にやってくれて構わないんだけど…。
どんなお題が出るのか気になり過ぎる。
そう考えていると、ウカミが早速一問目を出題してくれた。
「では、第一問!」
「紳人…!」
「あぁ!」
コンの言葉に素早く相槌を打ち身構える。下手な問題であれば速攻で正解し、次のお題に行かせればいい…!
「弟くんが好きな女の子の格好ってなぁんだ?♪」
「チェェェンジ!!」
ガタッ!と大きく音を立てて立ち上がった。この問題、何としても回答させるわけには行かない!
「大体どんなお題なのさ!おかしいから!俺しかわからないでしょそれ!?」
「では弟くん、回答をどうぞ!」
「……」
嵌められた…のか…!
クラス中の視線に晒され、半歩後ずさる。
しかしすぐ後ろには未子さんがいるし横は窓際。逃げ場は…そうだ、コンなら!
「わしもそれは気になるのう?」
逃げ場は無かった…四面楚歌である。こうなったら適当に答えて、それを正解にすれば良い。
俺が好きな格好なんだ、俺が正解を答えるのだからどんなものでもおかしくはない。
この勝負…俺の勝ちだ!
「俺はドレスとかが」
「なるほど弟くんは生まれたままの姿が好きと」
「彼シャツです!!」
「は〜い正解です♪男の子ですねっ」
俺は涙を流しながら着席した。
どうして、こんなところに来てしまったんだろう。俺たちの…
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