父と母、息子と義娘④
「全く…お主は本当にたわけじゃな!こんなものを買って帰りおって、しかも隠しておったな!?」
「いやそれはあの、父さんからの誕生日プレゼントで…」
「それでわしと紳人の子供が誕生日を迎えられなくなっては意味が無かろう!」
お冠のコンにぐわっと詰め寄られ、思わず言い淀んで視線が右往左往する。
確かに…未来の妻が望んでいないのに付けるのは良くないのかもしれない。
「わしとお主の逢瀬にこんなものは不要じゃ!良いな!?」
「……大丈夫だよ、コン」
「む…」
今すぐにでもその箱をゴミとして捨てそうな勢いのコンに、立ち上がって両手でその手を包み込んで微笑む。
不満げな表情のコン。そんな彼女の目を見ながらそっと囁き掛けた。
「確かに俺とコンの間にこんな隔たりは要らない」
「なれば…!」
「でも、今は良くても将来の俺たちにとって良くないんだ」
「……ふむ。なるほどのう、
そうなれば残りの学生生活の半分を身重で過ごすことになるわけじゃな」
「流石はコン、俺の言いたいことを分かってくれたんだね」
最初は釈然とせずもどかしげに声を上げるコンも、俺の言いたいことが伝わったみたいで肩から力を抜いて思案するようにポツリと呟く。
そう…勿論高校生の身でだとかコンの体裁にも良くないという気持ちもあるけれど。
結局のところ、1番の理由はコンが心配なんだ。
妊婦の生活は話を聞いたり想像するだけでも大変なもの。
一度俺も近くの公共施設で開かれた妊婦体験教室なるものに、学校行事の一環で参加したことがある。
その時持たされた水バックの重量と来たら、骨が軋んでしまうのではと思うくらい重かった。
体も自由に動かせず立ち上がったり座ったりするだけでも一苦労。
あんな生活を学生生活と一緒にするなんて考えただけで、身の毛がよだつほどに恐ろしい。
しかも、コンは俺より頭一つ分ほど小柄だ。その身に感じる重さは俺よりも大きいはず。
神様なので多少は平気かもしれないが…でも、だから気にしないなんて無責任なこと言えたものか。
「やれやれ…本当にお
「コン!」
「じゃが!明日だけは勘弁してくれんかのぉ…?わしもお主もずっと待ち侘びた日じゃ、その次からは卒業まで我慢するから…!」
「分かった、俺も愛してるコンに喜んで欲しい。明日は特別ってことにしよう」
「〜〜!ありがとうじゃ紳人、愛してる!」
涙ぐみつつも俺に抱きつくコンに再度「愛してる」と吐息混じりに囁き、ふるるっ!と背筋を震わせコンはその耳と尻尾を忙しなく揺らめかせる。
「紳人…キス、したいのじゃが」
「奇遇だねコン。俺もしたい」
その微笑みから愛を伝えるように見つめ合い、静かに瞼を閉じて。
そして…瑞々しく柔らかなその唇へ俺の唇をあてがった。
コンの唇は、温かくて、愛おしい。
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