あんな縁（こと）、コンな日々（こと）

父と母、息子と義娘②

「紳人、あのね…」

神妙に口を開く母に俺と父さんの視線が向けられ、そして…口を開いた。

「----そういうことはもっと早く言いなさいな！」

「えぇ！？」

「やっぱりそうだよな母さん！本当に水臭いぞ、紳人！そんなめでたいこと何で言わなかった！」

予想していたものとは大分違う反応を返され、ずずいっと軽く身を乗り出す二人に気押され仰け反りつつ困惑してしまう。

「色々あって…あと良いの？俺未成年だから結婚するのに許可が…」

「そんなもん幾らだってしてやる！寧ろこっちから早く孫の顔を見せろとせっついてやろうか！？」

「やめよう？息子として色々恥ずかしいからね？」

「じゃあそのつもりはないの？」

「それもやめて！？答えづらいよ母さん！」

父さんと母さんは、何故だか当人の俺よりもノリ気に見える。祝ってくれる気持ちは嬉しいのだが…熱烈すぎてちょっとおかしい。

優しい笑顔がニヤニヤ笑いに変わっているので、確実に冗談半分で揶揄ってるね？

まぁ…そう分かっていてもコメントしづらいものばかり。誤魔化すように無言を返し、流れてきたちょっとだけ高い皿を取りこれ見よがしに食べた。

「照れたな」

「照れましたね」

「分かってるなら言わないで！？」

少し意地悪な両親に反射的にツッコんでしまう。

「だが…なぁ？」

「ですねぇ？」

わざとらしく間延びした声を出す父さんに、真似するようにして頷く母さん。

駄目だ…本当に仲良し過ぎるよこの両親。

俺とコンも負けてられないな！（？）此方にはウカミという姉もいるんだぞ！（？？）

妙なところで対抗意識を燃やしていると、そうだと父さんがポンと思い出したと手を鳴らした。

「古風な考えかも知らんが、やはり嫁に貰うのであれば相手方の両親にご挨拶に伺わないとな」

「あー…確かにね。でも父さん、実はコンの両親はもう既に他界しちゃって。ウカミが保護者代わり…というか保護者そのものなんだ」

元は親を持たぬ『逸れ神』だったコンに顔を合わせる相手は本来存在しない。

なので、彼女を保護したウカミがその立場に当たるだろう。

「そうだったのか…すまない。しかし、ならば話が早い。近いうちにお前の家に伺うとしよう、そこで改めてご挨拶だ」

「ウカミさん、何が好きなのかしら…お気に召すものを差し上げられたら良いけど」

最初は申し訳なさそうに目を伏せた父さんが、すぐにホッとした顔になる。

それに相槌を打ちつつ明後日の方を見て考え母さん。

もってこいのが一つあるので、思わず笑ってしまいながら人差し指を立てて提案した。

「それならプリンが一番だよ。目がないんだ、コンもウカミも」

「おぉ！それは良いことを聞いた、とびきり美味しいものを買っていこう！」

「お眼鏡に適うものを見繕わないといけませんね、貴方」

「任せろ。父さんも甘いものには目がなくてな、実は昨日もこっそり…」

「こっそり…？」

「あ、いやそのだな」

「後でお話ししましょうね〜♪」

……そういえば、父さんはおやつにはよく甘いものを食べていたっけ。

最近ではそれも控えていたみたい…母さんの前では。

こりゃ、今日の晩酌はノンアルでつまみはお小言かな。あぁ父さんそんな目で俺を見ないで、助けを求められても未成年の俺にはどうすることもできないから。

これを機にお酒と間食は控えて健康的な生活を送ろうね⭐︎

そんな想いを込めてウィンクとサムズアップを見せると、伝わったのかは分からないが父さんはガックリと項垂れた。