巡るは星、求めるは誰③
「むぐむぐ…美味いのう!」
「ん〜♪これは美味ですね、レシピを教えていただけませんか?」
「それは良いですがあの…」
「む?お主がここに来た理由か?単純じゃ、妾があそこからヒョイっと連れてきたのよ」
ペロリとプリンを平らげてしまわれたこのお
ついこの間、俺は急に『神隔世』へと迷い込んだ。
高天原で神々に囲まれて呆然としていると、アマ様が現れ俺はこの天岩戸へ誘われる。
そこで俺が迷い込んだ理由はアマ様が寝ている俺を無理矢理連れてきて、その最中うっかり俺を手放したせいだと判明。
まぁ特段気にすることでも無かったので置いておくことにして、俺とコンの恋人関係にキャッキャと盛り上がって手を出したのかと聞かれた。
その当時…いや今もだけど、まだキスしかしていなかったので素直に答えるとヘタレという不名誉な称号を頂戴してしまったのである。
なので、練習と称して二神に襲われそうになったところコンとウカミが追い付いて皆で一夜を過ごして帰った…というのが前回のお話。
今回に至っては間違いなくアマ様の所為であるとバレている筈なので、もう間もなくコンたちが来る頃合いだ。
「全く、普通此方に来たら最初は妾の所に来るものでは無いか?」
「……」
「何じゃ?」
「いえ…凄く真っ当なことを仰るのでつい」
「お主は妾を何じゃと思っておるか!?」
「ごめんなさい!」
「それは何に対してじゃ!」
「ごめんなさい!」
「両方か!?」
アマ様は、かの日本八百万の最高神天照大御神の分身が一柱らしい。
なので最初に挨拶するべきだというその発言は至極当然、けれど内心はちょっぴりポン…お茶目さのある神様だと思っているので禁断の謝罪二度付けを敢行した。
「そうですよ、紳人さん」
「そうじゃそうじゃ!ビシッと妾の威厳を示してやれ!」
「これでも一生懸命頑張ってるんですから!」
「一言余計ではないか!」
この通り、彼女に仕える神様のコトさんでさえ揶揄うのだからどうも恭しくというのが難しい。
本人も堅苦しすぎるのは好きではないというけど…ちょっと親しすぎかな?
無礼講としておこう。
「やれやれ…まぁ良かろう。どうじゃ、あれからコンとの仲は進展したか?」
「てっきりアマ様たちは見守ってるとばかり思ったけど…」
「いやぁ、実は四六時中覗いてやろうと思ってはいたんじゃが」
さりげなく恐ろしいことしようとしてるなこの最高神。
「流石に私が止めました。それに、こうして報告に来てくれる口実にもなりますから」
「なるほど確かに。では…そうですね、単刀直入に言うと婚約しました」
「「おぉ〜」」
以前と同じ縁側で、パチパチと拍手が響く。
「つまり逢瀬は重ねたのじゃな!?」
「まだですけど…」
「何じゃ、つまらん奴め」
「やっぱり草食系というやつでしょうか?」
聞こえてますよお二方。草食系だなんて失礼な、ちゃんとプリンも食べますよ!
「こ、これでも来週の9日になったらコンとの逢瀬をするって約束してるんです!」
ほぼ強制的にやくそくさせられたようなものだけとね。
「おや、ちゃんと殿方らしいことをしているんですね」
「うむうむ。
すけべと言われなかったことを喜ぶべきか、神様然として受け入れていることを突っ込むべきか…!
暫しの間本気で悩んだけど、墓穴を掘る訳もいかない。此処はスルーしておこう。
「「でもその場でしないのはヘタレじゃな(ですね)」」
……スルー、しておこう……!!
「----慎重と言って欲しいのう、そこも此奴の良さなのじゃから」
「コン」
無事に追いついたらしい、コンやウカミにトコノメが縁側へ降りてくる。
ふと、とたた…とコンが俺に駆け寄りむぎゅっと抱き締められ、尻尾でも包み込んできた。
唐突なご褒美に、ほう…と全身の力を抜いてされるがままになる。
「恐らく紳人から聞いたであろうが、此奴は恋人改めわしの将来の旦那様じゃ。よろしく頼むのう?」
何だか周囲の神々がくすくすと微笑ましくも温かく微笑んだ気がしたけど、惚けていた俺にはよく分からなかった。
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