第3話 恐怖の持久走!

「ピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨ。」

…ん、うるさいなあ。なんだ?

「って、うわあ!」

目を開けると、孝太郎の顔面が視界のほとんどを占めていた。

「コッケコッコー!」

僕が目を開けたのを確認した孝太郎が鶏を真似を始めた。

「うるさいなぁ。」

僕は布団を深く被り、耳を塞いで防御した。それを引き剥がそうとしながらニワトリのモノマネも辞めない孝太郎。

五分ほど悶着があった末、孝太郎に布団が引き剥がされた。

「今何時だかわかってんのか?」

僕は恐る恐る時計を見る。7時45分……。

「ヤバい!」

「だから言ったろ。」

僕が家を出るのが8時ちょうど。これから家に帰って、朝食を食べて着替えて…あっ!あと孝太郎の家に泊まってしまったから今日の学校の用意をしていない!

「じゃあな!」

「がんばれー。」

気楽に言うこうたろうの横を走り抜け、孝太郎のお母さんに挨拶し高速で自分のものをかき集めた。

「体操服忘れんなよ。」

玄関を出ようとした時、こうたろうが言ってきた。こいつ、もう着替えてやがる。こんな早起きだったのか。

「今日の体育って…なんだっけ?」

「持久走。」

マジか…。いや、今はそれより急がねば。

「ありがとう。」

そう言って僕はこうたろうの家を出た。

家に帰ると小言を言ってくるお母さんを華麗にスルー、そして2階の自分の部屋に行き用意を始める。体操服も忘れずに入れる。そういや、あいつには毎年一緒に走ろう詐欺されてるんだよな。用意が終わると下に降り、5分で朝食を食べ、学校へダッシュ!(終始お母さんの機嫌が悪かったから今日帰ったら殺されるな…。)


そして、待ちに待った持久走の時間…。

「よーし。お前ら半袖半ズボンになったな。位置につけー。」

そう言うのは、体育の田中先生だ。小太りでいつも上下ジャージ姿にサングラスをかけている。かなり怖めの先生で生徒からも、なんなら1部の先生からも嫌われてたりする。

それより、なんで持久走の時は半袖半ズボンにならないといけないんだ!もう冬だって言うのに、寒すぎるだろ!

「一緒に頑張ろな!」

孝太郎が話しかけてきた。もうこいつの一緒に走ろう詐欺には騙されないぞ。それより、こいつは半袖半ズボンになってもピンピンしてる。ほんとに同じ人間か?

「いや、個人でテキトーに走る。」

僕はいつもどれだけ頑張っても最後にゴールする。その時にもう終わってる人たちと応援してくる孝太郎の横を走るのは、結構辛い。それなら最初から本気は出さない方がまだマシだ。

「ちぇっ、わかった。個人で頑張ろな。」

「スタートするぞー。よーい、」

ピーという笛の合図でみんなが一斉に走り出す。僕は最下位グループでのんびり走り出す。

とその時、僕は足元に光る何かが落ちているのに気がついた。ゆっくり走っている僕しか気づかないほどのものだ。拾ってみると、金属のビー玉みたいなものだった。走り終わったあと、先生に渡そう。


持久走が終わった。

僕の記録はもちろん最下位。孝太郎は1位だった。…あいつよく僕に『一緒に』なんて言えたな。

走り終わって僕は例の玉を先生に届けた。

「これは、パチンコの玉だな。どこに落ちてた?」

「スタート近くの地面です。」

「そうか。」

明らかに目が笑っていない。これはまずいかも。

僕は一礼して先生を離れた。しかし、僕の予想とは違い、授業は普通に終わった。授業終わりにめっちゃくちゃ言われると思ったのに。

そういえば落し物で思い出したけど、僕もこの前シャーペンを落としてるんだった。落し物箱を見に行こう。

「えっと、僕のシャーペン…あった!」

幸い、僕のシャーペンはすぐに見つかった。それにしても、落し物箱には色んなものが入ってるんだな。消しゴム、タオル、水筒、サングラスまである。家の鍵っぽいものもあるが、これをなくした人は大丈夫なのか?

そうして、教室に戻ると僕を待っていたのは恐怖の放送だった。

『放課後全校生徒は体育館に集まりなさい。緊急集会があります。』

もっと酷いほうだったかぁ…。


その後、僕たちは放課後約1時間体育館で先生のながーい説教を聞かされた。

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