第3話 常飲

 隆と和子のクラスメイトが、父親を亡くした。

 秋口になって体調を崩し、入院した。年末まで持たなかった。ガンだった。

 和子は、悲しみに暮れる女友達をなぐさめた。小学5年の時、事故で父親を亡くしているだけに、辛さが分かった。


「谷の近くで炭焼きしながら、元気で働いとったようやで」

 和子は友達の話を伝えた。

「谷の水で粉ジュース溶いて『こんなにうまいものはない』って、喉が渇いたら、いつも飲んどったんやって」


 隆は聞いていて、テレビのCMを思い出した。その粉ジュースを一、二度、買ってもらったことはあった。ただ、あんな甘ったるいものを、毎日飲む気にはなれなかった。


「ひと夏、飲み続けたから、村の衆も心配しとったらしいで」

 和子の母親・富江おばさんは、勤め先の農協で、そんな話を耳にしたのだろう。

「体に悪いものがいろんな形で出回るようになったから、気をつけんといかんなあ」

 妹の富江おばさんが出したお茶を飲みながら、勲おじさんが言った。

「そうや。富江、風呂の石鹸せっけんあるか?」

 富江おばさんは風呂場に行った。

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