第7話 進化したら、退化した。おかしいだろ!!

 ちょっと待って、うごけないんですけど…?


 いや、気のせいだよね。


 バカなこと言うなって!


 あんなに歩いてたんだから、そんなわけなかろうって……。




 ふん!!


 ふーーーん!!



 ふーーーーーーーん!



 ――はい。ダメです。


 ピクリとも、ミジンコほども動きません。


 こんなことある?ないよね?


 ないって言ってほしいんだけど!?


 これ以上退化することあるの!?




 昔のゲームでもこんなにひどくないよ!?


 昔のゲーム、知らないけど!!



 けど、俺はこんなときに使える魔法の呪文を知ってるのさ!


 え?みんなも知ってる?


 それは、怖いって。


 まあ、いいや。じゃあ、分かるなら一緒に叫ぼう。


 いくぞ!


「ステータスオォープン!!」


 おお。


 いつも通りの3Dだ。


 形変わらず、何か変わった?


 えーっと……。



 お!!


 種族が変わって…………る?


『高橋 悠人:路地裏のゴミ箱』



 おおおおお!!


 え、進化して、これぇ?


 ゴミ溜めのゴミ箱から路地裏のゴミ箱に進化したっていわれても、実感が湧かないっていうかー。


 メリットを感じないよね~メリットを!


 動けなくなって、ゴミ溜め卒業したのは、果たしていいことなのか!?



 おい、クソ運営!どうなっとんじゃ!


 詫び入れろ!!



 まっ、どうせ運営さんは出てこないって知ってるんで、別にいいけどね!


 気にしてないわ。もう……。



 あ、人が近づいてきたー。


 おお、この人近づいて入れてくれる人じゃん。


 あれ?そういや、今まで近づいて入れてくれる人いなかった気が……!


 まさか、これこそ路地裏の効果なのでは!?


 え、待って今の人……歩いて行っちゃったけど、ゴミは……?


 ――あれ?おなかの中にあるんですけど!?


 ゴミたまってるんですけど!?



 いつ入れた!?エスパーかよ!


 こわ!!


 まさか投げ入れないと痛くないのか……!?


 これは、大収穫も大収穫!


 運営さん、ありがとうございます!


 さっきはすいません!ほんと、クソ運営とか言っちゃって、詫びるのは私の方でしたね!



 ほんとすいま…いたっ!!


 くっそ!誰か投げて入れやがったな!


 それも、これ知ってるぞ!


 一番痛いランキング1位の紙丸めたやつやん!


 後ろから投げられたら反応できないんだぞ!


 前言撤回だ!


 クソ運営め!ゴミ箱から転生させろー!


 ふん、ふん!!


 えーまってまって~。


 動けないから地団駄も踏めないんだけど~。




 そんなこんなで、動けない時間を過ごしていると、花火が終わって帰る人が多くなってきた。



 そうなると、ゴミを捨てたい人も多くなるわけで……!



「大量じゃああ!!!」


 俺のテンションは最高潮に達していた。


 何にもしなくてもお金が入ってくる感覚ってこういう感覚なんだな!


 もう、少しくらいゴミがこぼれても気にならないわ!!


 さあ、どんどん入れてくれー!!



 20分後。



「もう……もう……勘弁して……」


 僕のゴミ箱(おなか)はいっぱいになっていた。



 まずい。


 分解しても分解しても一瞬でゴミ箱が埋まっちゃう。



 これがフォアグラの気持ちか……。


 あ、フォアグラは動物じゃねえや。



〈ゴミの分解を開始します…………〉


〈ゴミの内容→セイドンの串、皿、スプーン……………〉


〈汚れているため、吸収率が上昇します。…………〉


〈吸収率0.0001%………移動力が0.01上昇しました。……………〉



 もう、この音も、うるさいんよね!


 通知が鳴りやまないYoutuberとかTikTokerはどうしてんだろ!



 これが嬉しい悲鳴だとしたら、もうドМだわ。



 ん?違うな?


 あの人達は通知をオフに……。



 ―――それだ!!




「ステータスオォープン!!」


 下に見ていくと……。あった。


 通知設定!!


 えっと、全部通知オフっと。


 いや、別に何でどうなったとか、あんまり関係ないし……。


 フィーリングで行こう。


 困ったときはステータス見れば、解決!


 ふう。快適、快適……うっぷ、気持ち悪い……。


 ゴミ箱ちょうだい……って俺がゴミ箱だったわ!



 あーしょうもねえことやってたら、気持ち悪くなくなってきた。


 すご、俺の寒いギャク。



 あー、分解早くされないかなあ。気持ち悪くならないのであれば、ただのボーナスタイムなんだよなあ。



 にしてもごみの捨て方ってセンス出るなあ……。



 俺みたいに粗雑な人は、ゴミ箱は言った瞬間、手榴弾みたいにはじけ飛ぶ。


 けど、丁寧な人は、ゴミ箱の中でもきれいに捨てられてんのよね。



 こんなのゴミ箱にならなかったら気が付かなかったわ。





 さてと、周りに人がいて動くに動けんが、移動力もかなり上がったでしょう。


 これは、見ておくしかないな!


 いでよ!


「ステータスオォープン!」



 この時、ゴミ箱は思い出した。


 通知を全て切ってしまった自分の愚かさを。


 人類に忌避の目を向けられた現実を。



 え、なんか、世界が静まり返ったんだけど……。


 まさか、今の声、聞こえてた……?


 目の前の群青色の画面がその答えを教えてくれる。


 レベル4 話せる。


 これは早く言ってほしかったなあ!?


 いきなりゴミ箱がステータスオォープンってしゃべったら、そりゃあの空気になるわ。


 怖いもん。


 だれも昔人間だったんだな~かわいそうに。なんて思わないよ?



 こわっ!なにあれ?近寄らんどこ……


 ってなるに決まってんだよな。




 あーどうしよ。


 これ絶対ドン引きされてる。


 うーん……。


 仕方ない。こういう時は、黙ってないでもう一度!


「ステータスオォープン!!」


「ステータスオォープン!!」



 さあ、異世界人たちの反応はっと……。


「======がな==========」


「なん――――――わた―――――――――――」



 なんかひとしきり話した後、普通に帰っていきました。



 ま、そうだよね!!


 だって、ゴミ箱でなんか音が鳴ったら驚くわ!


 けど、それが2回、3回鳴ったらどう?



 あ、下の方になんかあるのか~。ゴミでつぶされて音が鳴ってるのね!


 ってなるわな!




 ――あれ?


 待てよ?


 ここって異世界だよな??



 そんな音がなる機械なんて、置いてあるのか……?



 おっとっとっと~?



 なんか流れが変わったな。


 まずいかもしれん。


 これは、早めに退散した方がよさそうだな!


 お、今人がいないぞ?


 こういう時はいっそいで……退散!!!




 ハイ!ハイ!ハイ!ハイ!


 おおおおおお!


 ここに来た時より、はええや!!


 通知切ってるから分かんねえけど、これはいい!


 まずは路地裏のゴミ箱らしく、路地裏を目指していきましょう!



 ハイ!ハイ!ハイ!ハイ!


 けど、中のゴミが重心を変えてくるのがちとうざいな。


 大きく揺れると、その分ゴミも大きく揺れるのよね。



 早く、中のもの分解しちゃってほしいわ。


 ハイ!ハイ!ハイ!ハイ!


 まあ、文句ばっか言っててもダメだよね!


 もう、路地裏見えてきたし!


 さあ、路地裏にとうちゃーく!


 ふう。


 あれれ?


 なんか体がちょっと光ってるんですけど!?



 何が起っとるんだ!?


 ちょ、こういう時は通知、通知!


〈ホームに戻ってきました〉


 ――はい。











 え、それだけ!?


 ホームに戻ってきたよ☆ってことで、光ったの?


 たまーにある、この無駄機能は何なんだろうか。


 作ったやつ昔のレトロゲームみたいなことしてくるな。


 けどなぁ~。


 そういうゲームに限って、無駄機能を後で使ったりするから、楽しんだけどね。



 ま、それはさておき、名実ともにホームに戻ってきたわけで。


 さ、何しよっかな!



 とりあえず、お祭りも終わって、もう真夜中だし、一回寝るか!



 臨時収入のゴミが入ってることを願って!!


 おやすみ!!









 ちゅんちゅんちゅんちゅん。


 おお、鳥さんおはよう。


 姿は見えないけど、君、ゴミ箱のふちに止まって鳴いてるよね?



 クソうるさい目覚まし時計かと思ったわ。



 鳥って遠くで鳴いてるから、気持ちいいんだね。


 耳元に居たら、鼓膜がおかしくなっちゃうわ。



 ハイ!


 よし。飛んでった。




 さあ、臨時収入は入ったかな。


 フリフリフリフリ。


 あ、空っぽだ。


 残念……!



 まあ、一応昨日の収穫とかも見てみたいし、ステータスでも見てみるか。


 では、小さい声でご唱和ください。


 あ、言わないとかなしね?


 こっちも恥ずかしいのに言ってるんだから。


 頼むよ、ほんとに。


 せーの。


「ステータスオープン」


 おお!!!



 え、俺進化してんじゃん!!!!!









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る