第8話 転職先がさ、ヘルペスみたいな名前でした。
『高橋 悠人:タスぺス通りのゴミ箱』
はい。どこーーーーー!?
ついに俺、知らない通りのゴミ箱に転職しました。
ちなみに勤務地は分かりません。
最初から、無断欠勤です!
どしてーーー?
なんでーーーー?
普通に「通りのゴミ箱」でよくない!?
そしたら、どこでもいけたやん!
――ん?
待てよ?
別に、どこでゴミ集めてもいいんじゃね?
だって、そこに居ろって言われてないし?
ただ、名前付いただけだし?
おお、我ながらいい案じゃん!
よし!今日は前行った通りと反対側に行こぉっと!!
ハイ!ハイ!ハイ!ハイ!
なんか、路地裏きれいになってね??
ハイ!ハイ!ハイ!ハイ!
あそこにあったゴミも片付けられてら。
ハイ!ハイ!ハイ!ハイ!
俺の最初にいたゴミ捨て場、無くなってるんですけど??
ちょっと休憩。
ん~?
なんか全体的に路地裏きれいになってね??
てか、ゴミが見当たらんのだけど?
結構あったと思ったんだけどなあ……。
ま、いっか!!
ホームがきれいになるのは嬉しいことだよね!!
さあ、気を取り直していきましょ~!!
せーの!
ハイ!ハイ!ハイ!ハイ!
ハイ!ハイ!ハイ!ハイ!
テンション爆上げで進んでいると、別の通りが見えてきた。
意外と大通り。
すげえや。
けどさあ、こうやって見ると、あの路地裏だけが異質だよなあ。
だって、3方向に大通りだぜ?
オセロ理論ならとっくに綺麗になってるはずなのに、ゴミ溜め。
どうなってんだか。
まあこの町にも何か事情があるんでしょう!
ゴミ箱の俺には関係ないけどね!!
にしても、広い道路だこと。
一体何が通るっていうんだね。
すると……。
どどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどd
なんだなんだなんだなんだ!?
体をフリフリして、周りを見る。
うわ。
初めて異世界を感じたわ。
何あれ。ゾウの亜種?
マンモス??
いや、バケモンじゃねえか!!!
まず、クソでけえ体。
うーん、大きさで例えるのは難しいけど、一軒家くらい?
CMに出てくるような2階建てくらいのやつね。
想像した?想像したね?
次いくよ?
それに大きな耳を書きます。
ゾウっぽいやつね。
で、色はなぜかピンク。
気持ち悪いね!!
で、おまけに長い鼻を付けちゃおう。
は?
――それ、ただのピンクのゾウじゃねえか!
そのとおーり!!
そんなピンクのゾウが荷台みたいなのを引きずって走ってくるわけ。
どう?
怖すぎるでしょ??
どどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどど
はーい。
無事通り過ぎていきました~。
そして、俺は風圧で吹き飛ばされましたとさ!
うおおおおおおおお!
回る回る。
体が円柱だとこんなに回るんだね!
ぐるぐるぐるぐるぐる
ぐるぐるぐるぐるぐる
ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる
―――もうそろそろ止まってくれてもいいよ?
最初は楽しんでたよ?
けど、もぉーそろそろ気持ちわる……。
まずい。吐いちゃう。
あ……出る……。
はい、出なーい!!
だって、ゴミ箱だもーん!
出せるもの無いもーん!
これ、まずいわ……。
人間のころなら、吐いて楽になれたのに、ゴミ箱だとそうはいかない。
もう、ずーっと気持ち悪いだけ。
あれだ。
牡蠣たべて当たったときと同じだわ。
あの、気持ち悪くて吐きたいのに、胃の中に何もない感じ。
これ!!
あ、やっと止まった。
何でだろ……?
あ、後ろに壁あるじゃん。
壁まで転がったんだ。
だから、止まったってことね。
ナイスじゃん!壁!!
もし話せるなら、お礼を言いたいくらいだぜ!
ま、話せねえけどな!!
にしても、ここからどうしようか。
起き上がれぬ。
どうやっても起き上がれぬ。
ちょっとイメージトレーニングから始めよう。
何?
みんなもやるんだよ!!!
いくぞ。
目の前にゴミ箱があります。
こいつが一人で起き上がるとしたらどう起き上がるか想像してみよう。
そうだなあ……。
まあ、下の部分を支点にして、ふんぬって入り口の部分が持ち上がるよな。
あれさ。まじでどうやんの?
だってやってること、超絶スーパー背筋やん。
もう、おっとせいもびっくりよ!?
ちょっとやってみよ!
せーの!ふんぬっ!
ピクリとできたかしら。
体の節々にピシッと電気が走った感覚はあったけどね!
えーどうするちゃむ。どうするちゃむ。
これは無理ちゃむ。
もう、起き上がるまで、ちゃむを語尾に付けるわ。
やってられねえ!
もう、ちゃむ付けるの忘れたちゃむ。
あれ?なんかさ、転がってるからいま世界が真横に見えてるんだけど、明らかに軍服みたいなの来ている人が近づいてくるんだよね。
何しにきたんだろ?
明らかに俺のこと見てるんよ。
もう、ガン見。
さすがに、変なゴミ箱だってバレたわけじゃないと思うんだけど。
「なんで===============」
「――――――――――――――――――――だと―――――」
おお、久しぶりに3歳の言語能力が役に立ったわ。
なんか疑問に思ってるっぽい。
イントネーションは似てるから、疑問形かそうでないかくらいは分かるようになってきた。
で、何を疑問に思っているんだい?
倒れてるのは、お宅の世界のぞぉおさんに吹き飛ばされたんだよ!!
って、あるえ?
ちゃんと起こしてくれんじゃん。
やるな!軍服!!
さあ、そのまま、俺をそこにおいて立ち去れぇい!
はい。ありがとうございました。
無事、捕獲されました。
絶賛、ピンクのゾウに乗車中です。
うーんとね。荷台に乗せられてるんだけど、めっちゃ快適!
ふわふわな荷台。
多分、下に毛布か何か敷いてあるのよね。
もう、ベッドよ…!こんなのいくつあってもいいんだから!
それにね?明らかに積んであるものがゴミじゃない!
ついに夢のような生活が幕を開けるんじゃない!?
いや、正直おかしいと思ったんだよ!
転生してゴミ箱になって、路地裏でゴミ漁ってる主人公って何!?
需要はどこ!?
って思うでしょ?
いや、今見てる人たちはゴミ箱同好会の方たちだって、分かってるけど…!
さすがにもうそろそろ、悠々自適な生活でほのぼのライフをしてもいいころなのよ!
はい。お待たせしました……私の……ぐぅ。
はっ!!!!
やば、寝た。
あまりにも久しぶりのベッドに、一瞬で意識もってかれた……。
あれ?
――ベッドは?
まさか夢……?妄想……?
いやいや、まさか。
あの柔らかさは本物でしたって!
まっいいや。
どっちでも。
そんなことより、ココドコ。
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