第6話 ステータスが1になったよ!これね、下がったんじゃないの!上がったの!!

 こうして、俺は1日中、大通りの角でゴミを集め続けた。



 にしても暇だなあ……。


 今日やったこと。まじで街路樹。


 ずーっと、ほとんど聞こえない、いや聞こえてるけど分からない言葉を聞き続けたわけで。


 もうそろそろしゃべれるんじゃね!?


 って思ったけど、全然進展はなかった。



 あれだね~。あかちゃんってすごいんだね~。


 こんな言語どうやって覚えんねん。


 ちょっと待てよ??



 赤ちゃんって、いっつもダウダウ、バウバウって言ってたな。


 あれ、何でしてるんだっけ?


 犬の真似?




 ま、いっか!ずっと暇なんだから、そのうち思い出すでしょ!!



 ということで、今日20回目となる魔法の呪文行きたいと思います!!


 では、コホン。


「ステータスオォープン!!」


 さあ、現れましたのは群青色の画面!


 その画面を下にスクロールすると!!


 そこにはなんとステータスが!!


 ってことで見て見ましょ~!


『高橋悠人:ゴミ溜めのゴミ箱


 移動力 0.99        』



 はい、これ見てくださいな!!



 移動力、0.99!!



 もうそろそろ大台の“1”。



 いや、ひくぅぅぅ!!



 1ってなに!?


 普通のラノベってステータス1からスタートなんじゃないの!?


 そこんところどうなんですかね!!


 なのに、ようやく1って!


 低すぎて実感が湧かないわ!



 ふう。ちょっと騒いでスッキリした……!


 まあ、けど記念すべき瞬間ではあるよなあ。


 1超えて何かとかは、考えてないけど、大台ではあるわけだし。



 ということで、今日もたくさんのゴミをプリーズミー!



 もう夜だからな。


 お祭りも佳境だ。


 ゴミを持ってきてくれる人もすごく多くなる。


 道の途中でご飯を食べている人もいるってことは、この後、山車のようなものでも出るのかな?



 だとしたら、楽しみだな~。


 異世界ってことは、幻想的~とか、不思議~とかそんな感想で見れる気がするし、


 それもこの位置なら、結構よく見え……。


 あ、その位置に立つと俺見え……。


 おーい。道が見えなくなっちゃったんですけどー。


 そこのおじさーん!


 ……オワタ。僕の観覧。




 うごきてえええ!


 ちょっと動けば、見えるのに……。


 リスク高いよなあ。



 ということで、そこのおっさんよ!


 ゴミを持ってきたら、今回は許そう。



 そのゴミ、今から捨てるんでしょ…?


 ほれ、捨てたまえ!ここに!!


 そして、私を強くするのだ!!




 お、おじさん察しがいいな。こうやって思いが伝わるのは路地裏の野良犬の時いら……。


 ――ん?路地裏の野良犬?


 まさか……!


 おじさんは、俺の近くまで来ずに、持っていたゴミをゴミ箱の近くに投げた。



 ゴミは周りに散らばり、1つもゴミ箱には入らない。



 ……こやつ。


 ゴミはゴミ箱にってつってるでしょーが!!!!



 なぁんでゴミ箱に捨ててくれないかなあ!


 だって、あとちょっとじゃん。


 あとちょっと踏み出して、ポイって捨てればいいだけなんよ?


 俺のゴミ箱は分類すらいらない!


 こんないいゴミ箱他にないでしょう!!



 仕方なく、転がった木の串を眺める。


 あー、もったいねえ。あんなに汚れて……。



 ――いや、よく考えたらよ?


 おじさんのごみって生理的に嫌じゃね?


 あ、これ考えすぎると、俺のバラ色異世界冒険が終わっちゃう。


 あーほしーなーあの木の串―(棒)


「いてっ」


 どうやら、後ろから来た人がゴミを入れてくれたらしい。


 あざっす!!


 にしても、これだけここにいるのに、入れてくれるのは串と木の皿ばっか。


 そう言えば、あの時入れてもらった紙はどうなったんだろ……。


 多分、他のものと同じように分解されて移動力になったんだろーな。


 残念ながら。



 それは置いておいて、異世界の人たちは、皿と串だけ捨てるみたいだ。


 飲み物はなんか濁ったグラスやら、瓶で飲んでるんだけど、あれは基本的に再利用っぽくて全然捨てられない。



 こう思うと、あの時自分の姿を確認できた瓶の破片は、奇跡だったんだなあ。


 あの時割ってくれた人、さんきゅ!!



 ってことで、少しずつゴミを入れてくれる人が増えてきた。


 道にも人がたくさん立ち止まっている。


 あれー?道にも人が立ち止まってるわ。


 って、ことは山車じゃないか~。


 それじゃあ、何が……?


 ひゅ~~~ど~~~~ん。



 おおおお!!


 そんな音とともに目の前いっぱいに花火が広がった。


 すげええええ!


 こんな町のど真ん中でありえないほど大きな花火が上がっている。



 あれ、火事になんねえのかな。


 だって、火花が建物に……。


 あ、付いた。おおお、建物の壁に付いた火花はすぐに消えた。


 あの壁の耐火性能えぐうう!


 あれだけ耐火性があるから、花火をバカスコ打てるんだなあ。


 にしても綺麗だ。


〈ゴミの分解を開始します…………〉


〈ゴミの内容→セイドンの串、皿、スプーン……………〉


〈汚れているため、吸収率が上昇します。…………〉


〈吸収率0.0001%………移動力が0.01上昇しました。……………〉



〈移動力が1になりました。進化します。〉


 ――ちょっとまっ………!



 俺の静止もむなしく、全身が光に包まれる。



 え、痛いんですけど!?


 痛いんですけどお!?


 体が作り替わっていくのを感じる。


 あ、これ知らない感覚だけど、知ってるわ。


 完全変態。さなぎが蝶に変わるときのやつだ。


 一度体をドロドロにして、再構築することで、全く違うものに成長する。



 ――そうか!!

 ついに俺も人間に!!



 くう!こんなゴミ箱みたいな体ともおさらばだぜ!


 ここからが俺の異世界ライフ!


 さあ、いでよ!わが体!!!




 目が覚めてみると、そこは今までいた大通りの角だった。


 まだ、周りの人たちは花火を見ている。


 みんな、俺が光ったことに気が付いてないんだな。


 で、人間になったところも花火で見てないと。


 じゃあ、さっそく周りを……。


 あれ……?
















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