第4話 明日はお祭り!って思っていた時期が俺にもありました。


 ふう。まあ、これでちょっと今の状態が分かったな。


 よし、おさらいしてみよう!


 まず、わたくし高橋悠人は異世界にやってきました。


 死んだのかどうかは分かりませんが、なぜか汚いゴミ箱になっていましたとさ。


 で、ゴミが捨てられると、そのゴミを吸収してレベルアップ!ってことみたいです。



 質問でーす!


 ゴミを捨ててもらえないとレベルアップできないんですか?


 A.多分そうでーす。



 え、じゃあ、完全他力本願寺?


 A.運に任せていこ~。


 そんな自問自答を繰り返す。



 まあ、仕方ない……!


 今はひたすら待ち!!!!









 数時間経っただろうか。


 あれから今日は一回もゴミを捨ててくれる人がいなかった。


 悲しい……。



 ま、その代わり、目の前が様変わりしたからいいけどね!!



 今日はずーっと、ごっついお兄さんたちが木の柱を運び込んでいた。


 そして露店がどんどんできてきている。


 これは、もう間違いない。


 明日は何かの祭りが開かれる!!!!



 ゴミの大収穫祭だ!!!!!




 と、いうことで今日はもう寝てしまおうと思う!


 明日の祭りは思いっきり楽しむぞ―――‼動けないけどね!!



 ではおやすみ!!!!!







 ………はっ!



 気が付くといつの間にか朝になっていた。


 お祭りはじま…………あれ?



 目を開けるとそこは、昨日いた場所とは全然違う路地裏だった。



 ここどこだ?


 治安のわるそーな場所だけど‥…。


 あ、野良犬だ。


 ちょっと、こっちには来ないで。動けないからさ……。ね?


 ちょっと、おしっこかけるのは、まじで勘弁……あ~………。


 もう、何でもいいです。




 ―――けど、ここどこなんだろう。耳を澄ませると、遠く一本奥の通りから陽気な音楽が聞こえてくる。



 あーー。分かったわ。


 夜のうちに移動させられたんだわ、これ。


 確かに店はどれも小ぎれいだったもんな。


 俺、きったないゴミ箱だし、絶賛犬のおしっこつきだし。


 そりゃ、移動させるわ。




 けど、逆に良かったかもしれん。


 これで、ゴミ捨て場に捨てられてたら、もう人生、いやゴミ箱終了のお知らせだったもんな~。



 あーそれにしてもいいな。向こうで祭りやってるんだろうなー。ゴミだけ、こっちに捨てに来てくれないかなあ。


 今の位置から見える物だけでも紹介しておくか~。


 まずは、野良犬!


 俺におしっこをかけたやつだね!


 今は何してるって?ごみを漁っております。


 もう、そのごみを俺のとこに持ってきてほしいくらいだわ。


 ――え?持ってきてくれるの?


 くわえて持ってくるじゃん。天才?


 エスパータイプだった?もしかして。



 そう思っていたら、野良犬は俺の前でゴミをばらまき始めた。



 ――広いところで広げたかっただけかい!!


 まあ、分かってたけど!



 けど、こうやってゴミをみると、すごく異世界みを感じるわ。


 まず、捨てられている紙に書かれた文字が全く読めない。


 インドの方の言葉ってもう読むとかのレベルじゃないじゃん。もう、そんな感じ。


 読ませる気ないんだろーなって分かるから、解読する気も起きない。


 あとは、食器が木でできている。


 日本とは違って、木のお皿やスプーンは使い捨てが当たり前みたいだ。


 結構な数、その辺に捨てられている。


 後は食べ物の食べ残しか~。


 野良犬は、お目当ての食べ残しを見つけると、それを目の前でバクバクと食べ始めた。


 ――うーん。これは飯テロと呼んでいいのだろうか。


 おなかはすいてるんだけど、人の食べ残しを食べたいと思うほど飢えてはないんだよな~。



 そんなことを考えてると、遠くから話し声が近づいてきた。


 お、袋持ってんじゃん!!


 とりあえず、じっと動かずに我慢する。


 動いてて、気味悪がられるのも困るからな。我慢我慢。


「===============」


「―――――――――――――――」


 うん、何言ってるかも分かりませんね。


 けど、1つだけ分かることがある。


 ――あの袋はゴミだ!!!!!



 男たちは楽しそうに話しながら、こちらにやってきた。


 そして、悪臭が鼻についたんだろう。


 俺にむかってゴミの袋を投げつけた。


「いてええええええええ!!」


 男の投げた袋は弧を描いて飛び、俺のゴミ箱にすっぽりと収まったのだ。


「=======================」


「――――――――――――――――――――――――」


 彼らとしては、成功したのが嬉しかったみたいで、ハイタッチをしてから引き返していった。



 こんちくしょー。こっちは痛がってるっているのに。



 ま、いいや。おかげでおなかがパンパンになった。



 ほどよい満腹すぎる。


 寝ていいかな?寝ていいよね!


 嗅覚なくて助かった~。おやすみ!!!!



〈ゴミの分解を開始します…………〉


〈ゴミの内容→生ごみ……………〉


〈吸収率0.00001%………移動力が0.01上昇しました。……………〉


〈レベルが上がりました!ピロリン♪〉











 ふああ。よく寝た~。


 おはよう、世界。


 で、何か変わったかね!!


 レベルとか上がってないんかな?


 うーん、分かんねえや!!


 しかぁーし!!こういう時、異世界転生では何をするのか、俺は知ってるのです!


 行くぞ!魔法の呪文!!


「すてぇーたすおーぷん!!」



 そう言うと目の前に3Dグラフィックが現れた。


「す、すげー……」


 真ん中に多分俺の3Dグラフィックが浮いている。


 で、周りに説明が書いてある。



 えっと何なに?


 名前は高橋 悠人。 はい、そうです。


 種族、ゴミ溜めのゴミ箱。 は、はいそうです。


 レベル 3。おお、上がってんじゃん。多分。


 で、出来ることはっと?


 レベル2目が見える。


 見えるようになったね~。


 レベル3言語理解(3歳児)。


 だそうです。


 な、なるほどね……!どうやら、僕は3歳児レベルに言語が分かるようになったようだ。


 ――それってすごくね?



 だって、3歳って結構しゃべれるよね?


 知らんけど。



 早く試してみたいな~。誰か通ってくれないかな~。




 そんな思いが通じたのか、チンピラみたいな二人組が路地を通っていく。



「======っす=========」


「ボス――――――――――――――だ」



 はい。3歳児より理解できてなーーーい。


 え、こんなに聞き取れてないの?


 うっそだー。そんなわけあるかって。


 全国のママたちに怒られろーー。


 うちの子はこんなにしゃべれたぞって言われるぞーーー。




 男の一人は葉巻のかすを俺のゴミ箱に捨てて歩いて行った。



「あっつ!!!!!!」



 これはまずいって!!


 なにこれ熱すぎるって!!!



 あいつ、火を完全に消して捨てなかったんだな!きっつ!!



 イメージとしては、体にたばこの火を押し付けられてる感じ。


 え?分かんない?


 いや、俺も漫画でしか見たことないけども!!!!




〈ゴミの分解を開始します…………〉


〈ゴミの内容→葉巻の燃えカス……………〉


〈火がついていたため、吸収率が上昇します〉


〈吸収率0.0001%………移動力が0.0001上昇しました。……………〉





 イケボが流れ終わると、ぴたりと熱さが消え去ったのを感じた。



 ――そうか。分解して吸収したんだ……。


 これもっと早く分解してくれたら、熱い思いしないで済んだのにな……。


 まあ、熱かったけど、ごみを捨ててくれたことには感謝をしよう!


 ありがとう!きんぴらくん!!





 そういえば、移動力なるものも相当集まってきたな……。


 ちょっと、フリフリタイム、久しぶりに始めちゃおうっかな!!



 はい!


 フリフリフリフリ。


 おお!


 すごい、すごいぞ…!!


 あんな少ししか上がらなかった体が浮いている。


 これ、体を斜めに揺らしたら、まさか!!



 俺はその場でくるっと半回転する。


「できた!」


 この日初めて、俺は自分の意思で動くことに成功した。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る