#37 目的の結果


 金髪短髪少女はニヒルに笑います。


 制服はボロボロ、

 

 服として機能しているのが奇跡というレベルです。


 「な、なぜキイロがここにいるッキュッ」

 「貴様をブチ殺すのに理由がいるのか?」


 「ありえない、確実に仕留める調整ッキュよ」

 「おかげで再生するのに手間どったぞ」


 金髪短髪少女わたしの体が赤く光る。


 ボロボロになった制服のスキマから赤がぞき、


 髪が腕が体が、炎の、炎となります。


 「こ、古代の回復魔法ッ」

 「なんの宴会芸の1つだ」


 少女は見せつけるように手を広げ、


 手の中ではマグマがうねります。


 「ちょっと、冗談キツイッキュよ」


 サニーの体からは汗が滴り、


 地面に落ちた汗は蒸発します。


 「笑えないのは私もだぞ」

 

 ──────まさか、同じ種族を2度滅ぼすハメになるとは


 「まったく運命とは難儀なものだ」

 「ようやく自分にイラつく理由が分かったッキュ」


 その威圧的な眼、

 特徴的な火の魔法、

 見下すようなセリフ、

 

 ──────忘れもしない。


 数十年前、王国にあらわれて、

  

 王を、親を、娘を、焼き殺した貴様を、


 噂では、とうに討たれたと思ってたが、

 

 「生きていたッキュか──────赤色せきしょくッ」


 金髪短髪少女に銃口がむけられ、


 「懐かしい2つ名だ」

 「そうか、さっさと死─────アガッ」

 「おっと変なことはするなよ」


 サニーの腕の先ごと消失します。


 少女は手をうごかす。


 「正味、貴様が基地でなにをしようが知ったことではない、


 滅んだ種族がなにしようとも勝手だ、


 耳無しとつるもうが、人間ごっこしようがどうでもいい」


 「クソ、じゃあなんでッキュ」

 

 「───────ウチの馬鹿を傷つけた、以上だ」

 「無茶苦茶すぎるッキュ」


 少女の手は円を描く。


 「安心しろ、すぐに楽になる」

 「こ、高濃度の魔力火球、馬鹿すぎるッキュ」 


 少女がつくりだす赤は、


 見ているだけで皮膚が焼かれそうなほど赤く、


 人を1人殺すには巨大というのがいいところです。


 「上級-火魔法─────死ね」

 

 少女の腕がぶれる。


 火球は盛大に壁に穴を、


 外からは水の流れが見えます。


 「なんのつもりだ、馬鹿」


 少女は腕を組みます。


 「まさか殺すなとでも言うつもりか」

 『──────』

 「あーそれは一理はあるな」

 『──────』

 「なあ、先っぽぐらい焼いとかないか」

 『─────』

 「ちっ、興がさめたというやつか」


 金髪短髪少女わたしの雰囲気がかわります。

 

 「やっぱりナビィにまかしたのは失敗でしたね」

 「キ、キイロ、わたしは……ッキュ」

 

 膝を震わす帽子サニー曹長、


 「別にあなたを殺す気はありませんよ」

 「そうッキュか、そうッキュか、


 やっぱりキイロは、

 

 ───────甘いッキュ」


 目の光は消えていないようです。


 「レイニー、キイロを殺すッキュ」

 「しまっ───────体が自由に動く?」

 「魔法が……解けているッキュ」 


 ナビィが先程なにかしていると思えば。


 だから無駄に煽っていたんですか。


 『あまりにも陳腐な魔法だったのでな』

 「次はもっといい魔法を買ってもらうんだな、ですか」

 「はは、コレ上級魔法ッキュよ──────ッ」


 帽子サニー曹長はあいた穴から飛び出します。


 「まて、サニー」

 「今回は、負けを認めるッキュよ」

 「下は激流だぞッ」

 「死にはしないッキュ」


 たしかに激流に飛び込めば逃げれるかもしれません。


 ですが、


 「───────逃がすとでも?」

 「へっ?」


 私も激流に飛び込みます。


 「ナビィ─────」

 『─────初級-火魔法』


 「お前ら、正気ッキュか」


 火球は帽子サニー曹長を押しあげ、

 

 私は重力にそって下に落ちます。 


 「レイニー大尉、あと任せました」

 「おい、キイロォッ」


 褐色レイニー大尉の叫び声が聞こえます。


 (最後に敬礼はぐらいはした方が良かったですね)


 ───────着水。


 水を感じる。


 口に、肺に、液体がそそがれ、


 体が沈んでいく。


 嗚呼、駄目だな、視界が──────……


 ◇◆◇


 金髪短髪少女は激流に流されます。


 体には切り傷が、顔も青いです。


 『まったく、他人を信じすぎだ、馬鹿』


 ────朱に交わればなんとやら、


 たった数週間で周囲に絆されて、

 戦士としての矜持はないのか、貴様は。


 結果、体はボロボロ、

 水はなんとか体から押しだしたが、

 呼吸はギリギリ、おまけに岩肌での怪我ときた。


 『治すにしても、残存魔力はほぼ0に近いんだぞ』


 馬鹿からの回答はない。

 分かっていたことだが、

 精神は眠り、肉体の回復に努めている。


 (結局、一番絆されてたのは私ということか)


 『クッソ気に喰わんが、事実か』


 気持ちよく寝やがって。

 後生のわかれかもしれんのだぞ。

 起きた時に道に困っても知らないからな。

 

 悪態ならいくらでも出てくる。

 生活習慣から、戦闘行動まで思い返せば沢山だ。


 だが────意外とわるい気がしないのが一番の癪だ。


 『ああ......使ってやるよ私の活動魔力を』


 『次起きたら少しは強くなっとくんだな、馬鹿が』


 あーあ、

 

 最初は体を乗っ取るつもりだったのに、


 どうしてこうなったんだが─────……


 ◇◆◇


 少女は激流に流されます。


 ですが、顔は少しだけ赤くなっていました。

 


 

 ──────────────────────


 これにて2章は完結です。

 次は、閉話をはさむか、3章を書いていきたいです。


 ここまで読んでいただきありがとうございます。

 

 作者より

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