#31 初めての実戦
【オオモリ城壁基地(城壁外周)】
新しくなった
流線形の形状が光を反射しています。
新型機の方が性能が良いというのは、認めますが。
(武装が大型拳銃のみで大丈夫なのでしょうか)
自分は、大型銃と盾まで持ってきいます。
『身軽な方が動きやすくて好きだぞ』
「いや、盾は持つべきだと思います」
盾は防御以外にも使えますし、有って損は無いです。
戦鋼の装甲が薄いだけというのは────むっ。
(後方の草むらですか)
「ッ4時の方向、敵来ま「ドンッドンッ」────へっ」
真横を通る、弾丸。
(いま、敵がいましたよね?)
通信機の
[あー、大丈夫、大丈夫、見えてるから]
向こうからは呑気な声が聞こえてくるのでした。
◇◆◇
あれから数匹の魔物を、屠った後────
[分かってたけど、心配はなさそうね]
(私が倒したの2匹だけなんですが、大丈夫なのでしょうか)
気づいた時には、魔物の反応が消えてましたし。
感覚としては、下手なホラーより怖いかもしれません。
そんな気持ちも知らず、通信機は光ります。
[本来、この任務は2人か3人で行うものなのだけど]
「てっきり一人で行うものだと」
始める時も、
[どこも、人手が足りないのよ]
────ウチの戦鋼乗り、ここ半年で3人も病院送りにされちゃってね。
大尉権限で人手が足りないって言ったら、訓練生送って来るし。
[正直、やってられないわ]
大尉の
[基本、森の中までは入らなくてもいいわよ]
「森で魔物が巣を作ったりしないんですか?」
[だから、定期的にチームを組んで“間引き”を行うわ]
「大変な作業ですね」
[ウチは、半分絶壁だから、まだ楽な方よ]
森の境目が続く先は、断崖絶壁。
影で下が見えないのが、深さを教えてくれますね。
(ですが、地を這う魔物なら来れませんが)
「鳥系の魔物とか、飛んできそうですけど」
[それが、警戒してたけど一向に来ないのよね]
時間の無駄だから、自動防衛システム便りになってるわ。
基本、城壁の周りをぐるぐるして、時間まで見張るのが仕事。
面倒だったら、城壁の上から撃ち殺してもいいわよ。
「────私も、よくやってるし」
大尉は簡単に言いますが、基地の城壁って見える以上に高いです。
戦鋼3個分、だいたい8mぐらいですかね。
(ミサイルを盗むのも一苦労でしたし)
流石に、あの距離からの狙撃は────
「ナビィ、来るときに撃ち殺された魔物いましたよね」
『いたな』
「アレ、森の中腹ぐらいだった気がするんですけど」
『ちなみに魔力はここから感じたぞ』
もしかして────拳銃あの距離を?
ですが、
「実はレイニー大尉、ヤバい人だったりします」
[なによ。効率がいいのよ、効率が]
拳銃での狙撃は、効率とかの問題じゃないと思います。
「じゃあ、私は業務に戻るから後はよろしく」
褐色大尉の戦鋼は、基地に戻っていきました。
アレ、通信機が光ってますね?
[忘れてた────粘液上の生物みたら、グレネードか魔法で焼き斬ること]
アレ、装甲は錆びさせるわ、繁殖力高いわで、最優先抹殺対象だから。
間違って基地内に持って帰ったら、懲罰モノよ。
覚えときなさい────スライムに人権は無いわ。
物騒な発言と共に、通信は切られました。
◇◆◇
【オオモリ城壁基地(格納庫)】
あの後、魔物と遭遇することもなく。
無事に警備は終わりました。
今までの事を考えると、一波乱ありそうと身構えていましたが。
(────いえ、緊張感を失うほうが駄目ですね)
慢心は死につながると、
「ぎりぎりー、間に合ったー」
急いできたのか、黒髪と
「はい、これどーぞ」
「これは?」
手渡されたのは、緑色の瓶。
重さの感じ、中には液体が入ってますね。
「今日、初実戦だったでしょー」
────お疲れさまーの、ジュースだよー
「それは、ありがとうございます」
「じゃー、この後も予定あるからサラバー」
嵐のように
わざわざ、飲み物を渡す為だけに来たのですか。
手元の瓶に書かれたラベルは【お茶サイダー】
古風なラベルが懐かしさを感じさせます。
背中に、嫌な汗を伝います。
心が惹かれるのは分かるのですが────
(個人的には、もう少し手心というか)
いや、貰った物にケチを付けるのも問題です。
ここは、思い切って飲むに限ります。
いざ、試飲。
「これはッ」
────意外といけますね。
また一つ、世界の神秘に近づいた気がします。
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