#30 シュミレータ。驚異の教育
【オオモリ城壁基地(格納庫)
挑戦期間は今日で7日目。
[2面 ゴブリンの巣窟]
操縦棒は強く握られ、体は少しひんやりします。
操縦席内のスイッチは、言葉と共に動きます。
出現したゴブリンのガキを潜り抜け、ボス戦へ。
(マザーゴブリンは、
慣れた手つきで
2面────クリア
[3面 ゴブリン寺院]
(次の面は、ボスの攻撃密度が高いですが、ランダムな安全地帯があります)
阿修羅の腕と、口からのビームを、
機体を滑り込ませることで、ギリギリ躱します。
「回避ッ、回避ッ、回避ッ────これでトドメです」
「どうですか、ナビィ」
『正式な
脳内の
3面────クリア
[4面 ゴブリンパニック!!]
「やはり数が多すぎますね」
『捌く腕は、まだ未熟だな』
4面────失敗
「一体一体は、何とかなるんですが」
『戦いとはそういうものだ』
「巨大ビーム兵器とか無いですかね」
『無い物ねだりは、死を招くぞ』
「その通りですね」
少し趣味に毒されているかもしれません。
(でも、プラモデル作るの楽しいですし)
既に6体ぐらい作って壊しているんですよね。
毎回、新しいのを渡して貰えるので、そろそろお返しが必要ですね。
気を取り直して、リトライするために電源を────
「────誰ですか?」
後ろに映る影は、小さい体と大きな頭。
「サニーッキュ。もう深夜だっッキュよ」
「もう、そんな時間ですか」
意外と気づかないモノですね。
先ほど昼飯を食べたと思ったのですが。
「それにしても、面白い魔法使ってるッキュね」
「えっと、実は教えてもらいまして」
「へー、誰かから教えてもらったキュっか?」
(……どう答えればいいのでしょう)
「の、脳内の先生に」
「……頭、大丈夫ッキュか」
「だ、だいじょうぶです」
そうですよね。
普通、脳内から声が聞こえるとかヤバい人ですよね。
(どう返すのが正解だったのでしょうか)
思わず天井を見上げます。
「ええっと────そうだッキュ。レイニーが呼んでるッキュ」
「大尉がですか?分かました」
単純に考えるなら
(一週間もたってクリアできていないというのは心にきますね)
夜も遅いですし、居るのなら隊員室とかでしょうか。
◇◆◇
【オオモリ城壁基地(業務室)】
「あら、丁度いいタイミングね」
「遅くなってすみません」
基地隊員の協力もあり、
「それで、今の進歩はどのぐらいかしら?」
「すみません。まだ4面で止まっています」
「うん、4面?」
「正確には────4面ボス前で終わってます」
業務室のカレンダーは、七日前で止まっています。
「まだ、一週間しかたってないわよね」
「そうですね」
「そっかぁ、アレ、4面までいったかぁ」
「何か問題でもあったのでしょうか?」
「いや、いいのよ。なんでもないわ」
妙に歯切れが悪いですね。
やはり、仮想訓練をクリアしてないのが問題なのでしょうか。
「まあ、3週間空いたと思えば儲けものね」
────ということで、仮想訓練は終了。明日からは、警戒の任に命じます。
「了解です」
敬礼を
しかし、口にはしませんが、明日から実戦ですか。
仮想訓練をしなくてもいいのはうれしいのですが。
(基地での訓練はどこにいったのでしょう)
なにより、私の
「もしかして、生身での戦闘でしょうか?」
「あら、そうね────ちょっと格納庫行ってきなさい」
投げられたのは、ぬいぐるみが付いたキー。
「様子を見たら、さっさと寝てちょうだい」
追い出されるように扉から出ます。
褐色大尉も疲れた顔ですし、早めに退散するとしましょう。
────私、4面行くの2年以上かかったんだけどなぁ。
扉の向こうの呟きが、届くことはありませんでした。
◇◆◇
【オオモリ城壁基地(格納庫)】
格納庫では、忙しなく作業員の方々が動いています。
「また仮想訓練か、嬢ちゃん」
「いえ、大尉に格納庫に行って来いと」
「ああ、なるほどな」
手に持った、ぬいぐるみの付きキーを見ると、整備員は納得してくれました。
「こっちに来てみろ」
そこにあったのは不透明なビニールがかけられた大きな塊。
各部からは、緑の光沢が覗いています。
(形状から戦鋼ですか?)
ですが、横で整備されている戦鋼と比べて大きいような?
「おい、ビニールとっていいか?」
「上は大丈夫っす」
軽い会話の後、整備員は外す作業に取り掛かります。
止めるためのテープが外されていき、ビニールが風で揺られます。
「んじゃ、見て驚くなよ」
上部のビニールが剝がされます。
「へっ?」
そこにあったのは────戦鋼【SP-N1】
旧時代な形状。
緑に輝く装甲。
特徴的な単眼。
(おまけに私が書いた文字まで再現されています)
ですが、細部が違いますね
「妙にガッシリしてる気が」
「そこに気づくとはお目が高いな、嬢ちゃん」
────コイツは、化け物だぜ。
なんせ、旧式のフレームに、新型のエンジンを積み込んでやがる。
おかげで、フレームの強度は限界に近い。下手すりゃパアだ。
「正直、新造した方がマシなレベルだ」
装甲を触ります。
傷一つなく、コーティングまでしてあります。
「てっきり廃棄されたと思ってたんですが」
「整備員共と大尉殿の暇つぶし、ってヤツだ」
まっ、まともに動いた原因追及してたら、こうなったとも言うが。
「傷つけるなとは言わんが、大事に使ってやってくれ」
そう言うと整備員は去っていきました。
「これが私の
久しぶりの愛機は、刺激的な匂いがしました。
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