#18 城塞は臨む
城塞の中は広大です。広さで言えば13番基地の何倍もありそうです。
「で、私はどうすれば」
上官に挨拶するのが一般的ですか。
ですが、周囲には基地服や野戦服を着た人ばかり。
『イカれた格好の奴でも探して見たら、だ』
「ふざけないで下さい、ナビィ」
上官が
鬼殺し教官←常時飲酒
「────割と、アリかもしれません」
(思わず唸ってしまいました)
ですが、人込みの中から簡単に
『居るぞ』「居ましたね」
基地の服を着て一般的と見せかけて、
六角ナットを髪留めにしている少女。
(個人的には、クレイジーさが足りないような気もしますが)
少なくとも、彼女は普通の人ではないことは分かりますね。
◇◆◇
背は私ぐらいなので、人込みに居ると分かりずらいですね。
「あの、すみません」
「へっ?」
急に声をかけたのは失礼だったでしょうか。
ですが、私にも分がありますので。
自分から名乗り、礼を徹するのがいい......ハズです。
「ええっと......
「訓練生?おっほん────貴様が、噂の新人かッ!」
ど、怒鳴られてしまいました。
早速、礼を欠いてしまったのでしょうか?
「ははい、一応新人です」
噂かどうかは知りません。
「らいらいき────大層な名前だな。今日から貴様はライライちゃんだ」
「はい?」
六角少女上官?は何を言っているのでしょうか。
(私の名前が気に食わなかったということですか?)
少しキラキラしているのは否めませんが。
「はいっ、復唱ッ」
「ら、ライライちゃんですッ」
私は、何をやっているんでしょうか。
ですが上官の命令です。
(円満な部隊を作るた為の秘訣かもしれませんし)
従っておくに越したことは────
「そういう訳でライライちゃん、同期の
「へっ?」
同期?
六角ナットを頭に付けた、灰髪の少女が同期?
「上官ではいないのでしょうか?」
「階級は兵長だけど、分類としては同じ訓練生だねー」
「......」
騙されました。
同期を騙すような
「いや、ごめんってー」
どんなに謝っても私の信用は取り戻せませんよ。
失ってからこそ、大切なものに気づくのですから。
◇◆◇
彼女の件は、夕食のおごりで勘弁してやりました。
(せいぜい薄くなった財布に悲しんでください)
たかが
「いーや、一人で上官に合いに行くの心細かったからさー」
どうやら
やはり、教官への挨拶が基本なのですね。
「いや、まずは基地司令に挨拶からだよ」
「そういうものなのでしょうか」
「そういうものだよ」
13番基地は、そんなこと無かったような。
いえ、個人の権力が強すぎたので許されたということでしょうか。
不思議ですね。
と、常識を説かれていたら、豪華な木の扉まで来ました。
扉には【司令室】ですか。なるほど。
「し、失礼しますー」
「......失礼します」
外の日光に照らされるは、豪華な調度品と、書類が散乱している机。
ソファーには、二人の
(どちらかが基地司令なのでしょうか?)
「指令なら居ないッキュ。納入品で忙しいッキュよ」
小さな少女が、
大きな帽子を押さえながら答えます。
「見ない顔だな。いや配属された訓練生か」
(胸部装甲が)大きい女性が、
黒髪短髪褐色の頭を向けます。
「私は、サニー曹長だッキュ」「レイニー・ディー、大尉よ」
小さい女性が、
大きい女性が、
(見かけが分かりやすくて、助かります)
何故か人の顔を覚えるのが苦手なんですよね。
生まれつきなのでしょうか?
「だいたい覚えました」
「何かすごく失礼な事考えていない?」
「馬鹿にしたなッキュか」
「まあいいわ────」
(タバコでも────いや)
『
銃弾が
軌道は、私と
(ギリギリ避けれなくは無いですが)
「ぐえッ────」「────ひゃあ」
盛大に後ろに跳んだので、壁に頭をぶつけましたね。
屈んだ
合計2発、体に当たった場所は。
(傷がありません)
服を捲っても、貫通跡もありません。
床で跳ねているのは、黒い弾。
(ゴム.....弾?でしたか)
「30点に────」「────0点って所ね」
(
『甘いな。私なら指で掴めたぞ』
そもそも掴んでどうするんですか。大尉にでも投げ返しますか?
「貴方、13基地で戦鋼に乗っていたわね」
「えっ、ええ」
急な質問です。
13基地で
(つまり、訓練生の書類には目を通しているということ)
見るからに、事務職、秘書ではなさそうですし。
と、すれば同じ
「
心臓の音が早くなります。
「上は隠しているけど、彼女の機体は」
────上部からの圧迫による損傷が酷かったそうで
悲劇が起きた場に
「────ッ」
「沈黙は損よ」
「そう、じゃあ────」「────はいはい、そこまでッキュ」
大尉の、銃を持つ手が震えます。
「サニーィッ」
「
私は指令室からひこずられます。
まだ────心臓が煩いですね。
◇◆◇
【監視カメラ(司令室) 記録復元】
映るは2人の男女。
一人は
一人は基地司令と言われた優男。
部屋の書類は風で舞い。ゴム弾も床を転がる。
「戻ったかしら」
「いや、参ったね────」
「ゲッソリするほど判子を押す羽目になったよ」
「それは結構なことで」
「
「そりゃもちろん、ピッカピカの新品が来てたが?」
「分解してちょうだい」
「へっ?」
「内部まで隈なくよ。最悪予備パーツにしても構わないわ」
「技研のチェックは通過済みだぜ」
「それでもよ」
「まあ、君が言うならだが、彼女の訓練はどうするのさ」
「どうにかするわ。それぐらいは、ね」
外から吹き込む風が強くなる。
「全く無茶言うぜ────まあ、それより」
「それより?」
「書類手伝ってくれないかな」
「女性の口説き方なら、他をオススメするわ」
暫しの沈黙────
「......あれーぇ、こんなところに銃弾がぁ」
「わ、わかったわよッ。あっ、ちょ、返しなさいソレ」
【記録終了】
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