#15 奇跡を求めて
『起きろ。まだ死んでないぞ』
「そう、ですね」
炎の直撃は、腕一本のおかげで耐えたというところですか。
(右手の感覚がぼやてていますね)
「助かりました、ナビィ」
『運が良かっただけだ』
「なら、運にはもう少し頑張って欲しいところです」
後ろには
前には、瀕死の
そして、化け物────
「無傷とは笑えますね」
『落ち込むな。生物としての格が違う』
「慰めるって知ってますか、ナビィ?」
機体を起こし、目前を構える。
「まだやるのか?鉄の
「当然です」
眼は、機体ではなく、私を射ています。
見られている?威圧が一段重くなった気がします。
「喋れる鉄の
怯えた整備員達を守るように、彼らに戦場を見せないようにするように。
「貴様、そこまでして砂利を助けたいのか」
「愚門です」
会話をしてきた?妙ですね。
先の戦いを見る限り、言葉で攻める相手ではない気がしますが。
(時間を稼げるなら構いませんか)
体は満身創痍。少しでも回復はしたいです。
できるだけ会話を続けてみるのも戦略ですね。
「
「興が乗ったのなら、お引き取り願えませんか?」
「冗談を言う奴だ────」
話の意図が読めませんね。
「───そうだな、
「!?」
何を、言っているのでしょうか。
言葉を解釈するなら────“私の命で皆が助かる”ということですか。
『死者に命は似合わん。乗るなよ』
「わ、わかっています」
私一人の命と他が釣り合うとも思いません。
ですが、それは、とても────魅力的に感じます。
(私は生き残りたいそう考えている......ハズです)
なのに、どうしてでしょう。
体は甘美な密を得たように、話を受け入れようとします。
「さて、どうする」
「わ、私は────」『────よく聞け、馬鹿。二択だ』
『1つ、戦って皆と死ぬ。2つ――――――』
2つの提案は、現実的であり、悪魔的でもあり、
現状を打破する可能性を持った提案でした。
「冗談ですよね、それ」
『選べ、2つに1つだ。強要はせん』
そんなの、どちらかを選ぶぐらいなら。
「私が命を差し出せばいいじゃないですかッ」
全てそれで丸く収まるじゃないですかッ。
私が教官を、整備員を、皆を守らないといけないんですよッ。
なのに、私は.....
『そんなの一択しか、選べないじゃないですか......』
『────そうか。作業はこちらがやる。
ポケットの青い宝球が一瞬光り始める。
光は、徐々に体に吸い込まれていく。
《
無機質な音が脳に流れる。
覚悟は、覚悟は決まったハズだ。
◇◆◇
「戦いをとるか」
《
《
操縦棒を前に倒す。
戦鋼は排気を出し、動き出す。
揺れる機体を押さえつけ、奥歯を食いしばりながら操る。
「────ッ」
目標は定まっている。
おぼつかない足取りで前に進む。
そして、
ぐちゃり
足の裏が生ぬるい。残骸から油ではない色が溢れている。
操縦席から生えるねじ曲がった腕が、内部の惨状を物語る。
(何故なのかは考えたくもないです。)
鬼武者でもなく、
私が私が、
私が────
『ちっ、まだ足らん。次ッ』
「────ッ」
整備員達は、傷ついた者を治療をし、周囲を確認する姿が映る。
(私は生きないといけないんですよッ。)
生きないと、
皆を守れないから、
私が皆を守る為に────
「し、死んでください」
私は呪詛を吐き出すように、
「えっ」
整備員のにいちゃんに、
知り合いのおっちゃんに、
怪我した見知らぬひと。
確実に「助けてッ」、念入りに「死にたくない」踏みつぶす。
少女は、赤く染まる。
《レベルが1になりました》
《これで一人前の冒険者です。これからも頑張ってください》
無機質な音が、脳に届く。
『ギリギリか。だが無いよりマシか』
「ナビィ、私はッ、どうすればッいい」
早く、早く指示をください。でなければ、私がおかしくなりそうです。
『.....奴に肉薄して、1秒稼げ』
「ふっはは、間違いなく死にますよ、それ」
『半分なら死んでも大丈夫だ。行けッ』
動力を回転させ、目標にカッ飛ばす。
制御なんて言葉は忘れてきた。
機械は前に進めばいい。
◇◆◇
私の動きを見ても、行動一つしない
舐めているのか、遊んでいるのか。
どちらにせよ、こちらから向かってやる。
「背水の陣か。いや、気でも狂ったか」
「あっ、あ゛ああああッ」
前に動けばいい。
「まあいい。
「ッ!」
頭部は消失。
だが、戦鋼は動いてはいる。
制御を失った特攻が、狙いを歪めたか────どうでもいいですね。
(どうせ相手は避けもしない)
「────ッ」
体の骨が鳴る。
「ならば」
[
機体を捨て、
周囲は煙炎に包まれているが、見えない訳ではない。
(さっきから、その顔が気に食わないんですよ)
拳の構えなど知るか、狙いは顔面。
ふざけた顔にど真ん中のストレート。
奴もこちらを向くが、知った事ではない。
「クソくらぇッ!」
「甘い────ちっ、
(安いですね。心臓の一つぐらいは覚悟していましたが)
死なないなら、結構ッ。
一秒、稼ぎましたよ。
「ナ、ビィッ────」『────任せろ』
左の手に、光彩が集まる。
色は────赤。全てを塗りつぶす、絶対の赤。
「
灼熱を獲た拳は、存在を許しはしない。
一切の妥協を許さず。左手は振り下ろされる。
「
「吹き飛べ、亡者が」
視界は途切れる。
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