#13 引き継いだものもの
構えるは満身創痍な機体────
捉えるは
首にかかる髪の毛が妙にベタ付く。
────
『まずは回避と攻撃からだ』
「動かすのに精一杯ですよッ」
動きは機敏に欠ける。
画面の光は半半といったところ。
『ならば死ぬだけだ。正面来るぞ』
赤黒く、平べったい、人様は人にあらず。
(こちらの気持ちも知らないで)
「
「かい───」
「
────歪む視界
一瞬、静寂にて意識が戻る。
何が起こった。
いや、ぶつかった。
当たったのだ攻撃が。
何と、魔物と────ゴブリンは
「どこへ?」
画面に影は無し。
嫌な金属音が上から鳴る。
ゴブリンの顔が、空いた穴からのぞく。
「取り付かれました、かッ」
すでに棍棒は鋭く見える。
「
「ちぃッ──!」
(あいかわらず、上手く動かせませんねッ)
「
が、鮮やかに着地され。
こちらに構える
傷も疲労も無ければ、害する視線のみが存在する。
「本当に化け物です、ね」
体が重い。
頭も痛い。
敵は素早い。
地球で戦ったヤツよりも何十倍も強そうだし、武器だって持ってる。
(やっぱり無理じゃないですか)
なのに、私は嗚咽だって止まらない様です。
『どうだ慣れたか?』
「全くです。腕を動かすのが限界、です、よ」
『おお、そうか。ほら、もう一回来るぞ』
こっちは焦っているのに、冗談じゃない。
(クソですよ。どうやって避ければいいんですかッ)
右に、いや左に操縦菅を倒すべきか。
『全く、 頭ではなく使えるモノを使え』
「意味が分かり──
地球での戦闘が奔る。
頭は動かなくとも、体が。
死地を超えた経験の動きが、右手を動かす。。
スローに見える、
──ああああァッ」
一突き
金属の手が、ゴブリンを貫く。
腕は破損。
エラーは多数。
息は絶え絶え。
腕も震えてる。
でも────魔物を仕留めた。
(ははッ、ようやく1体ですか)
最初から避ける必要はなかったんですね。
「経験の賜物……ですか」
『感謝してもいいぞ?』
「倒したのは、私ですよ」
地球にいた時よりも成長できた、ということでしょうか。
ナビィの力がなくても、いや────手は貸してくれましたね。
(どう考えても、頭より早く体が動いていましたし)
ナビィのアシストが入ってましたね。
『及第点だ。あと3匹、いけるな?』
「もちろんですッ」
喝として言葉を吐く。
殺らなければ、殺られるだけ。
未だ揺れる機体を、前に進める。
◇◆◇
燃え盛る炎の中に、
すでに
「助かりました......ナビィ」
『実践したのは貴様だ』
「ですが私は」
『だがは要らん。体に不調はないな』
「そうですね」
体に小さい傷はあれど────生きています。
激戦から生き延びました。
魔物を戦鋼で倒して。
戦鋼を彼女が託したお陰で。
「でも
『で、貴様の目に映るのはそれか?』
ことを思うと、なぜか眼が重いというのに。
(過去に囚われているということでしょうか)
『
画面に光が戻ります。
映るは、
大小様々なケガをしており、傷なしとはいえませんが無事です。
「あっ......よかったです」
『まだ戦場だ』
「ごめんなさい。でも気が抜けてしまって」
気持ちが止まらない。
いつぶりだろうか、誰かのことを悲しんだのは。
いつぶりだろうか、誰かのことで喜んだのは。
こちらに駆け寄ってくる。
「大丈夫かッ!キイロッ」
「あッ」
今更になって思い出します。
この
(彼が生きているのを期待しているのは
「本当にボロボロだな、ハッチ開けるぞ」
「いや、私は────」
言葉が終わる間もなく、開閉音が鳴ります。
口からはいだまに声はでません。
(彼は絶望しますよね)
有望な若者ではなく
「流石、期待の
「────えっ?」
疲労のあまり、顔を間違えてる?
(そんな馬鹿なことがありますか)
「き、
動揺か、服の隙間からパスが落ちる。
可愛いカードケースに入った、
パスの写真は─────私の顔。
「ひッ、何で」
『後で考えろ。
思考はいまだ宙に浮いたまま。
倉庫は燃え続けています。
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