#4 出会いは衝撃的

 【第13前線基地(通路)】


 黒髪短髪少女わたしは前に進みます。

 自室を確保し、任務を遂行する準備を行う。

 動きに迷いは無く、踏み出す一歩は軽快。

 

 軽快なのだが────

 

 「─────もしや罠でも踏んだのでしょうか?」


 既に基地内を歩き始めて、2時間。

 

 一向に目的地自室につく様子がありません。


 (既に似たようなドアを4回以上は見ています)


 移動阻害系の罠、いえ認識阻害の魔法というものでしょうか。


 『馬鹿には、確かに罠だな。どうする案内でもいるか?』

 「ナビィ、今はふざけている場合ではありません」


 敵の罠にはまっている可能性も否定できないんですよ。


 『いや、道に迷っているだけだろ』

 「ですが、進めど進めど同じ場所に」


 『同じ場所を回っているからな』

 「そ、そうなんですか?」


 言われてみれば、同じ場所を曲がっていた気もします。


 (言われてみないと気づかないものですね)


 思いを胸に秘め。

 慎重に一歩を踏み出します。


 『ちなみにそこは、さっき通ったぞ』

 「ナビィ、案内をお願いします」


 自室に到着する任務は、私には難しいようです。


 ◇◆◇


 【第13前線基地(通路)】


 短髪黒髪少女わたしは考えつきます。


 「ナビィ、大きな魔力は探せますか?」


 稚拙な考えではありますが。

 遺物は魔力を含んだ物と聞きました。


 (写真からも神々しさは伝わってきましたし)

 

 比較的大きな魔力を探せば見つかるのではないでしょうか?


 『いきなり、どうした?』

 「遺物を探すのに役に立たないかと」

 『確かに魔力は多く含んでいそうな道具アイテムだが』

 「無理なら、いいですよ」


 幻聴ナビィは気分屋なところがありますし。


 『そうだな、少し待て......』


 珍しく仕事をしてくれますね。


 なにか思うところが幻聴ナビィにもあるんでしょうか。


 『─────倉庫に1。基地に2。地下に1だ』

 「結構、見つかりましたね」


 情報によると遺物は1個だけでしたよね?

 

 遺物と同じだけの魔力が4つもあるのか。

 それとも、全てハズレなのか。


 ────なんにせよ手掛りは全くありません


 (とすれば、4つの内1つがアタリであると考えた方が楽ですか)


 とすれば────少し絞る必要があります。


 聞いた話によると、魔力は動物、非生物も持っているそうです。

 故に、基地の人間も判定対象。

 一方、遺物が移動するとは考えずらいです。


 ならば、


 「静止している魔力のみで絞れますか?」

 『基地1、地下1な具合だ』

 「ならば────基地の魔力への案内を頼みます」


 案内のルート変更を要求します。


 幻聴ナビィが手伝ってくれる内に任務を少しでも進めましょう。


 『地下の方が反応は大きいぞ?』

 「逃げ道が少ないのは不利かと」


 地下からの脱出は困難な上、高確率で怪しまれます。


 地上なら、道に迷ったなり言い訳ができるので安心です。


 『面白い。では案内をしてやる、迷うなよ』

 「頼みます」


 やる気のある幻聴ナビィは本当に頼りになりますね。


◇◆◇


 黒髪短髪少女わたしは、悩みます。


 『来たのはいいですが────』


 目の前に鎮座するは、背丈より大きい金属の扉。

 扉の表札は【保管庫】ですか。


 押しても、引いても、動く様子はなく。

 扉横を見れば、【lock】 と表示した端末。


 『どうする?魔力の反応はこの中だ』


 扉の表面をペチペチと叩きます。

 端末に基地のパスをかざします。


 ─────無反応


 「開きませんね」

 『鍵開けでもなければ、無理だろ』


 目的地は目の前です。


 (大きな魔力の発生源ぐらいは突き止めたいのですね)


 爆薬でもあれば、扉は破壊できるでしょうか。


 「ナビィ、火薬どれぐらいいると思います?」

 『思ったより、頑丈────避けろ』


 「へっ─────」「────滅殺めっさつッ」


 幻聴ナビィの言葉が、脳に響きます。

 意味は理解不能。

 故に、直感で対応。

 脊髄で、横に跳び。


 拳の一撃────大砲と捉えれるほどの威力。


 壁には、亀裂を入れ、粉末が舞う。

 

 (拳にしては威力が高いですね)

 

 直撃すれば、体が壁の二の舞いですか。


 「避けた?ならッ」

 「ナビィ、補助を────消、え────ッ」


 腹部に拳が

 

 動きは、見えなかった。

 周囲は焦げ臭く、口の中は温かい。


 『馬鹿っ、死ぬ気で意識を保てッ』

 

 黄色い、死神。

 揺れ動く髪も相まって、目の前の少女は、ブレて見えた。


 「じゃあね「カッ、カンッ」 ────っ」


 金属音の反響。

 基地のパス......手から落ちたのか。

 強く握っていたハズなんだが。

 

 「......ッ」


 震えた死神の声を聴く。

 まだ、殺さないのか?最近の死神は、悠長な様だ。


 「あ、あの~もしかして、新人さんだったりィ?」


 いや、殺すまでの余韻を楽しむタイプなのか?

 趣味性癖が多種多様なことで。

 

 (どちらにせよ、何も無い私を殺したところで)


 ダメだ、意識がもう────


 「あ、あっあ────初期anfänglich-回復魔法Erholungsmagie

 「────温かい」


 体が、ポカポカします。


 ◇◆◇


 数秒、数分どれぐらいたったのだろうか。

 振動が心地よい────振動?

 私は、何をしている。現実と夢の区別が付き、目が覚める。


 視界に跳びこんできたのは双丘。奥に浮かぶは、少女の顔。

 黄色きいろい髪が、頬を撫でる。


 「良かったぁ。起きてくれた」

 「何故、生きている?」


 「えっと、私が回復した訳で」

 「......何故、攻撃を?」


 「えーと、何というか、直感」

 

 ────悪い感じがしたから、的な。と彼女は話します。

 反射的に殺しに来た?どういう神経をしている?


 (いや、異世界では挨拶として当たり前のことなのでしょうか)


 疑問しか出てきません。

 ですが、心配はしてくれているようなので。


 「とりあえず、体は大丈夫」

 

 彼女の前で、手を動かします。

 物は握れそうなぐらいでしょうか。

 お腹には傷はありません。ヒビを入れる程の威力の拳を食らった、ハズですが。


 ────思い出すと、心臓が音が聞こえてきます。 


 「二度は、ごめんですね」

 『三途サンズの河は見れたか?』

 「死んで、何故河に?」


 「────頭とか、強く打ってない?」

 

 どうやら独り言ナビィとの会話を聞かれたようです。

 

 いつものことなので、と済ますとジト目で見られました。

 見合必殺サーチ&デストロイで殴って来る方に、ジト目をする資格は無いと思います。


 「ところで、なんでここ所に」

 「実は、自室への行き方が「グウゥゥ」あっ」

 「ふふっ、続きは食堂で話さない?」


 別に食料は持ってますから、大丈夫────

 ちょっ、無理やり連れて行かないでください。


 いや、力強すぎませんか、ゴリラか何かですかッ。


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