第15話 話し合い

結局、開いた胸の穴を埋めるように、Cさんとメールのやりとりを始め、電話をし、会瀬を重ねるようになるまでは早かった。

自分とCさんの弱さ、依存体質を感じた。


以前と変化したのは、セックスの回数が激減した。

そして、ふたりの問題に向き合い、本気で話し合う時間が増えた。

ベッドに並んで手を繋ぎ、時間を掛けて話し合った。

本音を話すことが怖くて、私は沢山泣いた。

Cさんも涙を流すことがあった。


話し合いのなかで、Cさんの暴力とセックスは、分かりやすい愛情なのかもしれないね、と話した。

セックスを応えてくれることで、安心する。

暴力をふるっても、許してくれることで愛情を感じる。

見えない愛情が、信じられない愛情が、分かりやすい。信じられる。

恋人にしか見せない姿。甘え。

恋人にしかしない甘え方。


そして私には、「愛情は(多少の)自己犠牲」だという思いがあった。


だけど、じゃあ、犠牲になるのは私だけ?


Cさんは私に、何を犠牲にしてくれるの?


私の好意に甘えないで。


私を犠牲にしないで。


泣きながら、震えながら本音を話した。

Cさんも泣いて、何度も懺悔し、謝罪していた。

何度か話すうちに、過去の恋人たちへの懺悔もし始めた。

少しずつ、泣かずに話し合うことができようになった。


長く話し合い、朝方抱き合うことがあった。

以前は回数を重ねていたが、最近は一度に時間を掛けるようになった。

一回を、とても大切にするようになった。

ふたりともクタクタになって朝を迎えて、明るくなり始めた中で疲れたお互いを笑い合い、泥のように眠った。

私たちは、平和な関係を取り戻しつつあった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る