第7話 幼馴染以上、恋人未満
「……楓乃聞いて」
俺の胸を握る楓乃の手をそっと添える。
「あのさ、楓乃の気持ちも分かるけど、彼氏と別れた反動も少しあると思うんだ」
「それって……」
「断るつもりはない。けど、最初から付き合うのはって思うところはある。幼馴染っていう関係もあるかもしれないけど」
幼馴染という関係性が一番大きいのかもしれない。
これでまで作り上げて来たこの関係性を崩すのが切ないし、怖いと思ってしまう自分がいる。
「それって、私と付き合ってくれないってこと……?」
徐々に楓乃の手が震えるのが伝わってくる。
「付き合うのはまだ早いってわけで、幼馴染以上にはなろうとは俺も考えてるよ」
このまま流れで付き合うと、後々後悔することもあるかもしれない。俺の楓乃も、幼馴染のままでよかったなと思う場面が現れるかもしれない。
それを含めて、『まだ』付き合うのは早い。
関係性も、これからの俺たちのことも含めて俺が出した最適解は、
「幼馴染以上、恋人未満から始めてみない?」
誰も傷つけない、一番円満な回答だ。
惚れそうになっていた以上、俺も楓乃を異性として見ているし、好きになりかけていた。
あいつに彼氏ができるまでは、幼馴染としてもそうじゃないとしても一生を共にするだろうなと考えていたまである。
付き合ってからのことは想像できないけど、楽しいことには違いない。その反面、片隅に何があるか分からないという恐怖もある。
だからこそ、俺が出した答えは、『幼馴染以上、恋人未満』なのだ。
「それって、私との関係を考えてくれるってこと?」
つぶらな瞳をしながら、楓乃は小首をかしげる。
「考えるよ、ちゃんと」
「理仁は幼馴染としてじゃなくて、私を女として見れるの?」
「そりゃー、見れないと言ったら嘘になるよな」
照れくさそうに、俺は頬を掻く。
「理仁より他の男を最初に選んだ私を、まだ見捨てないでいてくれる?」
「見捨ててたらそもそも俺はこの場に居ない」
「まあそうだよね」
目が合うとクスリと俺たちは含み笑いをする。
「逆に俺は元カレをぶっ飛ばす勢いまであるね。幼馴染以上、恋人未満の楓乃を何たぶらかしてんだーって」
楓乃との関係はこれからどうなるか分からない。
けれど、これまでのことを踏まえると案外うまく行きそうな予感がする。
だって『元』幼馴染だからな。
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