第6話 やっぱり私……
「お前が元気になったことだし、どっか飯食べに行くか! 今日は俺が奢ってやるぞ」
「マジ⁉」
俺は立ち上がると、サンダルを脱いでリビングへと入る。
「何食べよ~かなぁ。焼肉? お寿司? 奢ってくれるならカニ食べ放題も捨てがたい」
「あんまり高いのはやめてくれ……」
汚れた服を払うと、ルンルンな様子で楓乃もリビングに上がってくる。
楓乃が元気になるなら焼肉か回転寿司くらいなら安いくらいだろう。
もうあいつが悲しんでる顔なんて見たくないからな。
「俺、財布とスマホ部屋から取ってくるから玄関で待っててくれ」
リビングのドアを開けると、振り向きながら楓乃に言う。
さて、何円かかることやら。とりあえず2万くらい財布に入れておけば足りるか。
そんなことを考えながら2階にある自室へと向かおうとすると、
「……ちょっと待って」
急に現れた楓乃に後ろから手を掴まれた。
「どした? ……まさか黒毛和牛が出てくるお店に連れてけとかじゃないよな?」
もしそうなら今月のバイト代を今日で溶かすことになる。
「違う、そんな話じゃない」
「じゃぁなんだよ」
「……理仁はさ、私を幼馴染としか見てないの?」
「何、さっき話の続きか?」
もうとっくに終わった話かと思っていたが、楓乃は何か不満があったのだろうか。
疑問の目を向ける俺に、
「あのさ、さっきは流れで言っちゃった部分もあるし、理仁は本気にしてないとは思うけどさ……私、本気で理仁を好きになっちゃったの」
胸元をぎゅっと握りながら、楓乃は真剣な眼差しを俺に向けてくる。
「振られて自暴自棄になって言っちゃった部分もあるし、優しい理仁に漬け込んでた部分もあった、それはごめん……けどっ、気づいたんだよ。こんな私に優しくしてくれて、寄り添ってくれて……やっぱり、やっぱり私には理仁が必要なの……だから、だからっ!」
心の内を赤裸々に話す楓乃。
感情すべてが言葉に込められているのがひしひしと伝わってくる。
今更言い訳にしか聞こえないかもしれないが、俺もあまり楓乃の言葉を本気にはしていなかった。
言われたら考えるのは人間誰しもそうだ。けれど、まさか本気で言ってるとは思ってもいなかった。
嘘か本当かなんて、そんなの今の楓乃を見れば一目瞭然だ。
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