第4話 くだらない茶番
俺の反応を見た楓乃は、また部屋の隅で体育座りをし始める。
「理仁まで私を大切にしてくれないんだ……」
「またこの流れか」
なぜ人は落ち込むと、隅で体育座りをしたくなるのか。一生の謎だ。
この病んだ幼馴染をどう立ち直らせようか。
振られて病んで俺のせいでさらに病んだ。いや、俺のせいではないか。
楓乃が勝手に言ってるだけだし、責任はないはずだ。
でも、これがずっと続くのはごめんだから早めに対処したいところだ。
「ならもう生きる意味はないよね……」
静かにしていた楓乃は、ボソリと呟く。
「生きる意味って、またお前病み女子アピールか……」
そろそろこの流れに付き合うの疲れて来たんだが?
新しい人を探すと提案したのは俺だけど、まさかその相手が俺とは思っても居なかったからな。
これに関しては結果論でしかないけども。
「……もういい」
俯きながら呟くと、楓乃はひょろひょろと立ち上がりリビングの窓を開ける。
「次は何をしだすんだよ」
楓乃の奇行に頭を抱えながら言う俺に、
「いっそ死んでやる! 神様からお迎えが来る前に私から天国へ行ってやる!」
涙目で振り向くと、窓から身を乗り出して飛び降りようとする。
「おい早まるな! まだこの先の人生は長いんだぞ!」
刹那、俺は座っていたソファーから飛び出し、楓乃の手を掴む。
「もういいの! 私の人生お先真っ暗だから生きてても仕方ないの!」
「人生なんて何があるか分からないだろうが! 今はどん底かもしれないけど、これから先に光が見えるから!」
「暗い未来に、何を照らしても暗いままなの! もう私を離してよ!」
しゃがれ声を張り、涙が頬を伝る。
俺の瞳に映るのは、今にも張り裂けそうな感情を露わにする楓乃の表情。
短い期間だったが、心の底から好きだった彼氏に振られて苦しんで……一番信用してるであろう幼馴染の俺にまで冷たくされて……
楓乃には楓乃の葛藤があるんだ。生半可なものではなく、真剣な。
……とまぁ、真面目な話はさておき、
「お前一階のリビングから飛び降りて死ねるとでも思ってんのか! 庭の芝生は目と鼻の先にあるんだぞ⁉」
そう、飛び降りる以前の問題にここは一階。窓からジャンプしたとて、無事に着地できて当然だ。
足を挫いたり、滑らせて擦り傷くらいはできるかもしれないが、楓乃が思うような展開には決してならない。
……てかなんなんだこの茶番は。
楓乃も俺に指摘されて不意に苦笑いしてたし。
ここまで来てしまったら、楓乃自身は気づいても取り返しがつかないから最後までこの茶番を続けるしかないのか。
せめて2階にある俺の部屋だったら、俺も全力で止めるし話の流れ的に感動物になるはずだったのに……
リビングでよかったと安心する半面、なんか話の締りが悪い。
つくづく世の中は上手く出来てないなと思うよ……話の流れも俺の幼馴染も……
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