第3話 私を大切にしてくれるって言ったよね?♡

「なんでその答えにたどり着くんだよ」


 幼馴染である俺がわざわざ楓乃の彼氏になる必要性が分からない。

 こうやって話を聞いてあげてるし、遊びに行ったり、家にもよく行き来する仲だが、全部幼馴染だからであって、彼氏という肩書なんて必要はない。


 傍から見たら付き合ってると見えるかもしれないが、恋人という関係は俺たちの間にはいらない。


「だって、私のことを一番分かってくれてる身近な存在って理仁なわけじゃん?」

「わけじゃん? じゃねーよ」

「それに顔を整ってるし、身長も高い。私の彼氏に完璧だと思うんだよね」

「なんでお前が選ぶ側なんだよ」


 面倒くさい幼馴染に「私の彼氏になりなさいよ」なんて言われても嬉しくも何ともない。

 そうゆうことを言っていいのは、超絶美少女で性格も可愛いツンデレ女子だけだ。


 激重メルヘン幼馴染では決してない。


「もしかして理仁は覚えてないの?」


 ハッと何かを思い出したかのように、楓乃は俺に聞いてくる。


「ん? なんのことだよ」

「ほら、幼稚園の頃に私に言ってくれたじゃん。「将来は俺が絶対に幸せにする」って」

「あ?」


 急にアホなことを言い出す楓乃に俺はうなり気味になる。


「私は覚えてるよ? お花の指輪をくれて言ってくれたこと」


 一体いつの話をしてるんだよ。

 そんなの子供がやるままごとに過ぎない。


 幼稚園の頃に好きだった人とそうゆう約束をするのは誰しもが通る道だ。

 幼馴染なら、ずっと「一緒に居ようね」とか「結婚しよう」なんてものはテンプレートだ。


「私を大切にしてくれるって言ったよね?♡」

「おい待て早まるな」


 俺の方へ近寄ってくると、ジーっと俺の顔を見ながら小首をかしげる楓乃。


「昔の話を急に切り出されても困る。小さい頃の約束なんて遊びに過ぎないだろ?」

「本気だよ、私は」

「元カレはどうするんだよ。さっきまでずっと泣いてたじゃないか」

「あんな奴はもうどうでもいい。今の私にはもう理仁っていう大切な人がいるから」


 そっと俺の肩に頭を乗せてくる。

 勝手に告白されて、勝手に付き合う流れになってるぞおい。

 元カレで病んで、その反動で俺にヤンデレされても困るぞ。


 幼馴染をいきなり彼女にできるほど、俺は簡単に攻略できる男ではない。

 もちろん、楓乃を女子と見てないといえば嘘になる。


 けれど、それよりも格段に『幼馴染』として見ている。

 いきなり恋愛対象と見ろと言われても到底無理がある話だ。


「私じゃダメなの?」


 甘い声と上目遣いで、同情を誘ってくる楓乃。


「ダメ……というかいきなり言われても」


 俺にだって心の準備が必要だ。いくら幼馴染で仲がいいとはいえ、二つ返事でOKはできない。

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