第2話 私の彼氏になって?
「尽くしてたよ? ご飯作ってあげたり、プレゼント買ってあげたり、デート代も私が多めに出したり」
「完全にいいように使われてるぞおい」
とんだヒモ男だな。女癖が悪いだけではなく、女子をお金でしか見てなさそうだ。
「はぁ……こんな思いするなら付き合わなきゃよかった」
深いため息を吐く楓乃。
「そうだ。なんでそんな奴と付き合ってたんだよ」
「やっぱイケメンには勝てないよね」
「結局顔かよ」
だからクズに引っ掛かるんだよ。
顔で選んで付き合った人とまともに恋愛している人なんて見たことがない。
イケメンはモテる。
だから女も選び放題、ということは自分に都合がいい人じゃなかった場合は捨てて新しい女に移動する。
女子からしたらいい迷惑だ。
イケメンは罪。それに引っ掛かる女子も大概ではないけど。
今目の前に居る奴も例外ではない。的確に当てはまってる。
「まぁ、捨てられちゃった現実は変えられないし……前を向くしかないよね……」
床の木目をなぞり、遠い目をする楓乃。
「よしその意気だ」
「どうやったら立ち直れるんだろう……」
「んなこと言われてもな」
生まれてこの方、恋愛なんて一度もしたことない俺だ。当然失恋もしたことがない。
だから立ち直る方法なんて分かる筈もなく、そもそも恋というものすら分からない。
俺の意見じゃなくて、アニメや漫画の知識を借りて言うとしたら、
「新しい人を探す……とか?」
最善策はこれかもしれない。
元カレのことを忘れるくらいのいい人を探す。難しいかもしれないが、探すしかない。
でなければ永遠と被害が俺に来るからな。それだけはごめんだ。
クズ男に振られた幼馴染を優しく慰めるほど俺はいいやつではないからな。
「いい人……ね。そんな人が現れるのかな、私に」
「いずれは来るだろ。いずれは」
「早く来てほしいの! この乾ききって傷ついた心を癒してくれる最高の彼氏が!」
「んな手っ取り早く出来るなら俺だって苦労してないわ」
彼女がすぐ出来るのなら、俺だってとっくに作っている。
まぁ現実はそう上手くいかないから17年間彼女無しの拗らせ童貞なんだけど俺は。
「そっか、理仁は彼女いないんだよね……ていうか出来たことすら……」
「おい、その悲しげな目を向けるのはやめろ」
自分で言ってて泣けてくるのに他人に指摘されたら死にたくなる。
「でもそうなると理仁はフリーってことでしょ? それに私とも深い仲なわけだし私のことを分かってくれる……」
顎をさすりながら言うと、何かを企んでる目を向けてくる。
「お前、変なこと考えてないよな」
なんか悪寒がする。
この言い方はもしかすると、
「ねぇ、理仁。私の彼氏になって?」
もしかしたらだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます