彼氏に振られて病んでいる幼馴染を慰めたら更に病まれた
もんすたー
第1話 幼馴染、失恋する
とある日の夕暮れ。
自宅のリビングで俺、来栖理仁(くるすりひと)の目の前には殺伐とした光景が広がっていた。
「誰か私を殺してくれぇぇぇ! もう生きる意味なんてなくなったぁぁぁぁ!」
涙でメイクを崩し、床を転がりながら絶叫する女子、薬師寺楓乃(やくしじかの)。俺の幼馴染である。
「……人の家で叫ぶのはやめようか」
「この絶望から私を助けて……神様ぁぁぁぁ、お救いくださぃぃぃ!」
「たかが振られたくらいで大げさな」
天に祈りを捧げて苦しみからどうにか解放されようとしている。
こうなったのも、つい最近、というか数時間前に彼氏に振られたからである。
高校生の恋愛なんてたかが知れている。
一生を誓う愛を高校生で手に入れる人はごく少数しかいない。付き合っては別れるの繰り返しが恋愛の醍醐味まである。
なのにも関わらず、こうして楓乃は幼馴染である俺の前の前で大泣きしているというわけだ。
「なんで……なんで私を捨てたんだぁぁぁぁ! こんなにも可愛くておっぱい大きい完璧美少女を軽々しく捨てて別の女に行くなんてどんな神経してるんだぁぁぁ!」
そうゆうところだぞ。
いちいち自意識過剰すぎたから振られたんじゃないか? ここだけ切り取るとただの痛い女でしかない。
見た目に関しては一級品なことには間違いない。
童顔で可愛げのある顔に、セミロングの艶やかな茶髪。スタイルもよく胸も高校生らしくない成長具合だ。
難があるとしたら、性格。幼馴染だから慣れているが、他の男子に素を見せるとドン引きするくらいに面倒くさい性格をしている。
今みたいに、子供みたいに泣きぎゃくるところとか。
「付き合って一週間くらいだったのに、よくここまで落ち込めるよな逆に」
呆れてため息を吐く俺。
これがまだ一年以上付き合っていたなら納得がいく。高校生の恋愛で一年以上続くカップルなんて中々いないし、それなりに感情も芽生えるだろう。
しかし、楓乃が付き合っていた期間はたったの一週間弱。
挙句の果てに、彼氏は彼女をコロコロと返るクズ男という最底辺。
こんな彼氏と別れただけで人生の終わりみたいな顔をしている楓乃が逆に心配になる。
「私のどこが悪かったんだろう……尽くしてあげてたと思うんだけどなぁ」
だからそうゆうところだろ。
ぐすりと鼻を鳴らす楓乃に、俺はついツッコみそうになる。
「尽くしたってお前、相手は都合のいいやつとしか思ってなかったんじゃないのか?」
「やめてっ! 今の私に現実味のある事を言わないでっ!」
「言わなきゃお前一生メルヘン女貫くことになるけどいいのか? 夢ばっか見てても現実は変わらないぞ」
「……なんで理仁まで私に冷たくするの……」
「ごめん、今回ばかりは味方もクソもない」
楓乃も軽く見られたものだ。
所詮、体目的で遊ばれてたのか。まぁ高校生にもなれば清いお付き合いだけではなく、そうゆうピンクな部分も出てくるだろうし、あり得る話だけど……流石にそこは同情する。
「もう泣きそうだよ私は……」
部屋の角で体育座りをしながらボソボソと呟く楓乃。
「もう既に泣いてるじゃねーかよ」
「みるみる涙が溢れてくる……」
「お前これ以上泣くのかよ」
「泣いちゃ悪いか! 今日くらい泣かせてよ!」
「泣く理由が浅はか過ぎるんだよ」
いくら体目的で付き合われてたとはいえ、一週間の関係でこの泣きっぷりは凄い。
何をそこまで落ち込む要素があるのだろうか。
「どうせだったら、処女……あげたかったな」
「え?」
ポツリと言った楓乃の言葉に、俺は眉を顰める。
「もっと私を手放せなくなるようにしておけば別れを切り出されることもなかったかなぁ……」
「ちょ、ちょっと待て! ヤってないのか⁉」
「おい、私がそんな軽い女だとでも思ってたのか」
ジトっとした目を向けてくる楓乃に、
「いやそうじゃなくてさ……ほら、尽くしてたとか言ってたから俺はてっきり」
あの言い方をされると、夜のご奉仕も相手を喜ばせるためにしていたと思っていた。
紛らわしい言い方はやめて欲しい。心臓に悪い。
にしても安心だ。未経験は俺も同じだから先を越されていたらなんか負けた感じがするからな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます