第2話 ちょっと……いい?
おいおい振られて落ち込んでる時にこんな神展開あっていいのか?
どん底にいる俺に対して天からご褒美が舞い降りて来たと言っても過言ではない。
いやでも待て、まだ俺と確定したわけではない。
あの2人の推しが本当に俺と似た境遇の人だったとしたら、ただ勘違いしたイタイ奴でしかなくなる。
ウハウハするのはやめておこう。
「司波くんって裏で女子からモテてるから早く捕まえておいた方がいいってぇ」
「3年でもたまに聞くよ。司波くんのこと好きって話」
うん、これは確実に俺だな。
今名前で呼ばれちゃったし。というか同じクラスってだけで100%確定だったんだけどね。
この状況、どうしたものか。
下手に動けば気まずい展開になるだろうし、ここで静かにご飯を食べていればいいのだろうけど。
なんか故意ではないけど、盗み聞きしてるような感じになっているのがモヤモヤする。
まぁ、2人が俺がここに居ることを知ったうえで話してるのが悪いんだけども。
「緡音! ここは覚悟を決めなきゃいけないよ!」
「そうゆう空乃こそクラスでちょいちょい話してるわりには全然アピールできてないじゃん」
「それは……」
「私ばっかズルい! 行くなら2人で!」
空乃は俺にアピールしようとしてきてたのか? ごめんけど全く気づけてなかったわ。
なんか俺の近くで女子友達と話しているときに妙にソワソワしているとは思ったけど、まさかタイミングを見計らってたとは思わなかった。
「よしっ、一緒に話しかけにいこ!」
「そだねそだね! チャンスを掴もう私たちで!」
フンスと鼻を鳴らし、ハイタッチをする2人。
俺も心の準備をしておこう。今から美少女姉妹が俺に好意を持った状態で話しかけてくるんだ。
こっちも精神統一をしておかなければ。
スーッと深呼吸をして心拍数を下げようとするが……あれ、鼓動が段々早くなって……ヤバいヤバい、フルマラソンを走ったくらいの鼓動の速さだ……
クラスで話かけられても何ともないのに、好意を持たれてると分かった瞬間これだ。
はぁ、男って単純で嫌だ。
「あの~……ちょっといい?」
胸に手を当てている俺の後ろから、クラスで聞き覚えのある声が聞こえる。
「空乃、どうしたんだこんなところで……」
苦笑いをしながら振り向くと、引き攣った笑顔を浮かべる空乃と、その後ろに隠れている緡音の姿があった。
盛大に振られた俺は、何故か美少女姉妹の推しにされていた。 もんすたー @monsteramuamu
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