第2話 政略結婚!? はい、よろこんで!(2)
宝くじで一等が当たった人みたいな反応だ。
満面の笑みのダイアナにキラキラどころか、ギラギラした瞳で見つめられてシルバーはのけぞった。
「あ、ごめんなさい。嬉しくて涙が……」
ダイアナはハンカチで目元を押さえた。
元はショックと頭痛で涙ぐんでいたのだが、その辺の記憶が抜け落ちている彼女は嬉し泣きと捉えた。
ナチュラルメイクなのか、ウォータープルーフばっちりなのか分からないが、拭われた目元は綺麗なままだ。
ここで描写すべきかは意見が分かれるだろうが、ダイアナは淡い金髪、赤銅色の瞳の儚気な少女だ。
顔は整っているのだが、全体的に地味な為、よく見ないと美少女だと気付かれない。影が薄いとも言う。
シルバーは銀髪、灰青色の瞳で華やかな美貌の青年だ。身長や体格にも恵まれている。クラスどころか学校でもトップスリーに入るレベルのイケメンである。
話は戻るが、理解の範疇にない反応をされて、シルバーはたじろいだ。
他の国はどうかわからないが、少なくともジェンマ国で政略結婚は良いイメージがない。
一昔前までは普通に行われていたようだが、徐々にその数は減り、現在の国王が恋愛結婚をしたのが後押しとなり、今や恋愛結婚大正義時代だ。
政略結婚する者など、政治的なしがらみが多い一部の高位貴族や、シルバー達のようなワケアリくらいなものだ。
どちらも嫌々ながら受け入れざるを得ないのが現状だ。
(俺だって本当はスフィアと結婚したかった)
王立学園に入学して間も無く、二人は出会った。
その頃は、まだ支援なしでもスターリング家はギリギリやれていたので、シルバーは自由な恋愛を楽しんだ。
ギリギリ状態なら、彼女といちゃついてないで家の建て直ししろよ。これだから危機感のないボンボンは。
シルバーがスフィアと青春を謳歌していたら、あれよあれよという間にスターリング家は傾いた。最初は十度くらいの傾斜だったのに、最後はほぼ垂直だった。
(スターリング家を狙った、クレイ・アダマスの策略がなければ、俺も愛のある結婚ができたはずなのに……!)
当時、シルバーは特に何かをした覚えはなく、没落の原因に心当たりはない。
クレイは直ぐに侯爵家の窮状を聞きつけて、援助を引き替えに婚約を迫ってきた。
スターリング家は、あの男にハメられたに違いないとシルバーは考えている。
アホか、無策だったから急激に没落したんだよ。クレイは遣り手だから、情報が早いんだよ。後継なのに没落の原因がわからないの問題だろ。
この時点でやってはいけない判断ミス三連発である。
シルバーは一人息子であり、よっぽどの理由がなければ彼が優先的に家を継ぐことになる。
もしダイアナが、先ほどの彼の身勝手な言動を親にチクったら「適性に問題あり」と判定されたかもしれないが、幸か不幸かそうはならなかった。
記憶を取り戻す前の彼女は密告できるような度胸はないし、記憶を取り戻した彼女は覚えていない。運の良い野郎である。
そんな勝手極まりない思い込みで、ドアマットヒロインにされかかったダイアナは、ヤベェ拗らせ女の記憶を取り戻したことでドア『マッド』ヒロインに進化した。
「結婚を周りがお膳立てしてくれる。しかもイケメン、侯爵家……幸せぇぇ」
シルバーの本音は紛うことなくクズだったが、新生ダイアナも相当だった。
案外、破れ鍋に綴じ蓋のお似合いな二人かもしれない。
ダイアナの前世・斉橋 奏江がどんな女だったかは、次の話で語ることとする。
二人の会話劇は一旦中断されるが、ダイアナがどんな拗らせ女か説明しなければいけないので、二話だけ我慢してお付き合いいただきたい。
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