第14話 遠隔操作の凄さは
作戦成功――ハイタッチを交わす俺と久遠。青空のもと、小気味よい朗らかな音がパシンと響く。
「来翔、あいつにさ、あそこまでダイレクトに聞くかって思ったけど……そこで話を長引かせてくれたおかげで“作戦成功”だよ」
「あは、俺も口に出した瞬間、しまったって思った。此処はなんの建物なんだ……って、知りたいことそんまま聞いちゃって」
でも――あいつは。
〈幽冥の聖騎士〉はこう言った。
「教えるわけないだろう」と。
もし【暁の層楼】が世界の中枢部と関係のない場所なら、あいつだってあんなに隠したり、俺たちを追い出したりしない……そうしたってことは。
「「やっぱりこの世界の何らかと関係のある建物ってことなんだな」」
俺と久遠の言葉が揃った。また顔を見合わせて、笑い合う。
「じゃ、僕の家に戻って調査の続きしよう」
相棒がニヤリとしながら言った――そう、家で調査の続きをするのだ。
どうやってかって?
それこそ俺たちが「作戦成功」と言った理由。遠隔操作型の動くカメラを、建物内に残してきたのだ。俺が〈幽冥の聖騎士〉に積極的に話しかけていたのも、あいつの注意を俺との会話に集中させるため。その間に、久遠はカメラ搭載小型ロボットを、あいつの死角に放っていた。もちろん機械は、科学研究部の久遠開発。
「ああ、どんなのが『撮れている』かな。楽しみだ」
*
久遠の家に帰り、大急ぎでデスクトップパソコンを立ち上げる。データの共有アプリを開き、カメラからの転送映像を確認するべくクリックした。
「お、届いている」
久遠が声を上げた。画面いっぱいに表示される、薄暗い建物内の映像。俺たちはそれに見入った。
――カメラは、あの廊下をまっすぐに進んでいく。まだあいつには気づかれていないらしい。静かに廊下の隅を走行しながら、機械の目は確実に建物内部を撮り続けていた。
「……おわ、なんかあるぜ」
それを最初に見つけたのは俺だった。なにか不思議な感じのする扉がある。思わず驚いた――だって、ぶっと暗くて無機質な壁が続いていた廊下だったのに、突然変な模様のついた両開きのドアに突き当たったんだから。
「久遠、これ何だと思う?」
「……エレベーターっぽくないか。扉の構造とサイズからして」
「あー、ね。開くかな」
久遠がパソコンに繋げたコントローラーで、カメラを扉の前に移動させた。動くものを感知するセンサーが動作し、扉が開く。
「わ、やっぱりエレベーターだ」
「まあ、めっちゃ高い建物だったもんね。行けるとこまで行ってみようか」
ガタンと扉が閉まり、カメラを乗せた四角い箱は上へ上へと昇っていく。
それにしても、すごい機械だ。カメラは高精度だし、タイヤの動きも素早くて回転もできるし。久遠はこれをいつから作っていたのだろうか。俺がビルに居る誰か――実際には〈幽冥の聖騎士〉だったが――との話を長引かせている間に、久遠が動く。その作戦は昨日考えたものだった……が、そのときには既に、彼はもうカメラを完成させていた。
じゃあ、久遠はいつから。
このカメラを使おうと――つまり、【暁の層楼】に潜入しようと考えていたんだ……?
ふと横を見ると、画面を見つめる久遠の真剣な表情が目に入ってくる。それを見たら……なんだかさっきの質問も聞けなくなってしまって。
「よし、エレベーターが停まるぞ」
久遠が少しワクワクしたような声をあげて、画面を指した。俺もそちらに目を向ける。カメラの方向の都合で、今が何階なのかは分からない――扉が、開く。
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