第21話:夜襲

「やーいやーい!クソ熊ども!さっさと冬眠しやがれー!」


「なんだとあの人間…!!」


表では揺動作戦が開始したようだ。ガゼロさんのその大きな声が、僕らの作戦開始の合図だ。城ということもあり周りは入り組んだ街になっている、そこには当然死角が生まれる。幸い、あっさりと抜け穴は見つかり城に入ることができた。

「氏族長が居るのは最上階だ」


クーフーリンさんを先頭に僕らが後を続く。城内には徘徊する熊族がたまに居る程度で、難なく最上階まで辿り着けそうだ。熊族のほとんどは表に居るのだろう。例の亜人擬き、4氏族以外の亜人は居ない。クーフーリンさんの合図と共に王室と見られる部屋のドアを開けた。

「…来たか」


向こうは僕らの到着を待ち望んでいたように見えた。手にはハンマーと斧を持っており、それらは鎖で繋がっている。

「熊族現族長、ガガギズ・バームヘッドである」


その男の身長はおおよそ3m、腕は僕の体ほどはあるだろう。

「悪いがあんたの首を取らせてもらう、総員戦闘開始ッ!!」


真っ先にクーフーリンさんが飛び出した、僕も後から続き攻撃を入れにいく。ガガギズは斧を振るった。デカい体が故に動きが鈍く、すぐに反応できる。クーフーリンさんは飛び、斧の攻撃を交わしたと同時に槍を顔目掛けて投げた、がこれは避けられた。その間僕は斧の攻撃をスライディングで避けたのち足に槍を刺した、が毛が厚すぎて槍先が入らない。こちらに気づいたガガギズが僕に蹴りを入れた。

「うぅッ!!」


蹴られた勢いで壁に吹っ飛ばされ、前線から少し離れた。受け身は取れたのでダメージは最小限にとどめられた。

「フォルネッ!」


「余所見する暇はなかろう!!」


クーフーリンの頭上に大きなハンマーが振り下ろされようとしている。

「『ギガントストーン』!!」


奥からジィルキさんが魔術でそれを阻止した。砕け散った岩はガガギスに当たり一瞬の怯みが出た。

「『レールガン』ッ!」


ジィルキの隣にいるマッカーティの右目から魔法を出しガガギズの胸に当てた。ガガギズの目線はマッカーティの方に向いた

「余所見する暇ねぇだろ!!」


毛の少ない胸元にクーフーリンさん槍が刺さった。

「『ゲイボルグ:パッファフィッシュ』」


「ぐぅ!」


内部から棘が貫けれてるのが見えた。この絶好のチャンス、逃すわけには行かない!全力で走っても間に合わないなら…!

「『火砲ニトロ一天突鬼ポイントストライク』ぅ!」


投げた槍は真っ直ぐガガギズの腕目掛けていったが、簡単に払い除けられてしまった。すでに走っていた僕は火砲を操り僕の手元まで誘導した後すぐに

「『千連突鬼タウザンドインパクト』」


これで胴体に複数攻撃を入れる。流石にこれには狼狽えるガガギズ。だがもちろん僕とクーフーリンさんは薙ぎ払われた。クーフーリンさんに至っては壁に投げられた。

「思い上がるな人間ッ!!」


持っていた斧をマッカーティさんたちの方に投擲した、いや振り下ろされたという表現の方があってる。なんせ左手の斧から伸びる鎖を使って遠心力で上から斧を振り下ろしたからだ。

「李国流『一点反射ピンポイントカウンター』ッ!」


ガリレオさんが飛び出し、ハンマーを跳ね返した。あのハンマーはガリレオさんの数倍の大きさと重量のはず、さすが李国流三席の実力。今ならガガギズは無防備だ!ここに…

「『亜音速射出スピアヘッドショット』!」


これなら流石に避けれまい!

「ぁ甘いわッ!」


片手で簡単に薙ぎ払われた。ああああああああああ!僕の槍!外に飛んでったぁ!!??

「フォルネ!俺の槍を使え!」


クーフーリンさんが自分の槍、ゲイボルグを僕に投げた。

「でも呪いの影響でクーフーリンさんの手元に戻るんじゃ…」


「秘策がある、が長くは持たない」


するとクーフーリンさんの身体が青く光出した。いつもの黒い戦闘服が段々と白くなっていく。

「ソウル・アーツ:エヴァポレーション」


ソウル・アーツ!?限られた人間しか辿り着けない極技!?クーフーリンさんはそれを使えるというのか!?

「『フラグラック』」


アレは、以前洞窟を掘る際に使ってた剣?あの時は光ってて見えなかったけど… 双剣なのか。

「いくぞフォルネ、あまり俺の相棒を乱暴に扱ってくれるなよ?」


「ええもちろんです!」


クーフーリンさんが真っ先に飛んで行った。速い、いつもとは比にならないぐらい速いスピードで駆け抜けた。

「はは!流石にこれにはついて来れないか?」


「貴様… 何をした!」


「足枷を外しただけ、さッ!」


猛スピードで移動し、すれ違い様にガガギズを斬りつけてる。速度によるブーストで剣が分厚い毛を貫通してる。

「鬱陶しいぞ!」


「捕まえてみやがれ!」


とても俺が間に入って援護する暇もない。ただただ遠くから見てるだけだった。

「ふん、慣れてきたぞ…」


「何言って… うお!?」


まさかあの一瞬でクーフーリンさんの足を捕まえたのか!?

「『フィジックプロテクト』ッ!」


ジィルキさんの魔術で物理的衝撃は緩和されるがそれでもガガギズはクーフーリンをつかんだまま離さない。助けに行かなければ—

「『怪物之息吹フォルネウスブレス』」


背後からの一撃でガガギズは倒れ、クーフーリンさんを離した。

「わちは来てやったぞ!」


「ガキが何故ここに…?」


「わちはガキじゃない!!」


フォルネウス!?そういえば姿を見ないなとは思ってたけど… まさかここで参戦とは。

「おいアレは敵なのか!?」


「待ってくださいマッカーティさん!彼女は味方です!」


何はともあれ助かった!フォルネウスはあんな見た目だけど一応は悪魔!形勢逆転だ!

「ハエが1匹増えただけではないか」


「はッ!いつまでそんな大口叩いていられるかの?」


「ここまでやれた事には褒めてやろう… 吾輩の真の力を使おう…」


真の力?さっきまでは手加減して戦っていたのか!?

「『獣人化ズヴェエル』」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る